マーケティングは、「誰に・何を・どのように」を設計するところから始まります。
最初にやることは、「誰に売るのか」を決めることです。
誰に売るのかがわからなければ、何を売ればいいのか、どのように売れば良いのかわからないからです。
売れない商品の特徴は、誰に売っているのかが具体的ではない商品です。
モノが不足していた昔なら、みんなに届けることが大量に商品を売るための最善策でした。
でも、今はみんながみんな必要としているモノはありません。
必要なモノは既に普及しているので、1人1人の満足を満たすために商品は買われています。
なので、「誰に売るのか」これを決めることはとても大切です。
今回は、理想的なターゲットを見つけるためのリサーチの方法についてお伝えします。
目次
マーケターがやる3つのマーケティングリサーチ法
リサーチとは調査のことです。ターゲットのリサーチで調べることは、自分たちが商品を売る相手がどんな人なのかです。
それを知るための情報には、年齢や性別など外面的なものと、解決したい課題や価値観など内面的なものがあります。
これらをリサーチするために、目的に合わせて大きく3つのリサーチ方法があります。
ポイント
- 広くて浅いマーケティングリサーチ
- 狭くて深いマーケティングリサーチ
- 超狭くて超深いマーケティングリサーチ
①広くて浅いマーケティングリサーチ
一般的に思い浮かべられるアンケート調査などのリサーチ法です。
協力者に対して、設問に回答してもらうやり方で情報を集めます。そして、一定量の回答数を元に統計処理を行い、全体の傾向を掴むというやり方をするリサーチのやり方です。
広くて浅いリサーチのポイント
メリット:手軽にリサーチができる
デメリット:外面的な情報収集や想定の範囲内の回答しか得られない
このアンケートリサーチには活用のされ方が2パターンあります。
①需要のありかを調べるため
②施策の結果を確認するため
利用されるシーン①需要のありかを調べる
需要というのは、商品に対する欲求のことです。買える範囲の商品に対して使われます。
僕が新しいスマホを欲しいと思っていたらそれは需要ですが、自家用ジェット機を欲しいと思っていても、それを需要とは言いません。
大富豪が自家用ジェット機を欲しいと思っていたら、それは需要です。
なので需要を知るということは、みんなが「何を欲しいと思っているか」「何を買おうと思っているか」を知ることになります。
アンケート調査による広くて浅いリサーチは、人の外面的な情報を集めるのに適しています。
例えば
- どんな年齢で
- どんな家族構成で
- どんな年収で
- どこに住んでいて
- 何を買っていて
- 何を買おうとしていて
- どんなサービスを利用しているのか
など。
何に需要があるのかを知れば、その需要を満たすための商品を作れます。
どこに需要があるのかを知れば、その需要に対して商品を売れます。
例えば
- 都心で売れ出しているものは、今後地方でも売れていくだろうから、地方に展開していこう!
- 男性用化粧品を買っている人が増えてきているから、自分たちも開発しよう!
- 小さな子供のいる家庭でロボット掃除機が売れているから、家族向けにキャンペーンをしよう!
など。
ですが、アンケート形式のリサーチは「何が欲しいか」「何を買ったか」など外面的な情報を集めるためには使えますが、「なぜ買ったのか?」などの内面的な情報を集めることには使えません。
アンケートの設問項目に答える時、人は頭で考えて回答するからです。
頭で考えて回答すると、意識的にも無意識的にも「都合の良い自分としての回答」にできます。
集められた情報が回答者の意図的なものになり、本当の心の内を表したものではないので、活かせる情報ではなくなってしまいます。
参考
マクドナルドは市場調査の結果、「ヘルシーなものを食べたい」という意見を採用して、サラダマックを販売したのですが失敗しました。
今店頭で見かけない商品ですよね。サラダマック。そんなものがあったことも忘れてるくらいの存在です。
その後、ボリュームのあるクォーターパウンダーが大ヒットしたことからも、マクドナルドに顧客が求めていたのはジャンクさやボリューム、身体によくないかもしれないけどそういう物を食べたいという欲求だったことがわかります。
アンケートの回答が如何に参考にできないかがわかりますよね。
利用されるシーン②施策の結果を確認する
もう一つの利用シーンは、売っている商品や実施したキャンペーン・プロモーションに対して、生活者がどう感じたのかを調べるためのリサーチです。
顧客を対象にリサーチすれば、その成果の理由を知ることができます。
顧客ではない人を対象にリサーチすれば、課題を知ることができます。
企業のマーケティング部署でよくやっているリサーチが、この施策の結果を確認するためのリサーチです。
ブランド調査やイメージ調査と呼ばれたりするリサーチで、プロモーションによってブランド認知やブランドイメージが、どう変わったのかを知るために行われます。
マーケティング担当者は、自分たちがやったことの結果を会社から評価されるので、その評価のための材料集めとして行われているものになります。
「でも、ブランドイメージなんてどうやって調査するの?」と思いますよね。
イメージがどう変わったのか、どれだけ変わったのかは数で表せません。
なのでブランド調査は、イメージの変化の有る無しについて回答を集めて定量化することで、結果を把握できるようにしています。
メモ
定量的とは、物事の様子や変化などを、数字に直して分析することです。
個人的には、アンケートの数字を元に評価をしたり、課題を設定したり、対策を打ったりすることが効果的なのかについては、疑いを持っています。
なぜなら、人の意見は作られるからです。
プロのリサーチャーに頼めば、結果を操作することもできてしまいます。
結局、自分たちの都合の良い情報を、事実かのように示すためにやっているリサーチが多いのではないかと思っています。
②狭くて深いマーケティングリサーチ
狭くて深いリサーチとは、直接インタビューをして情報を集めるリサーチ方法です。
想定されるターゲット像に合う人に質問をしていきます。
アンケート調査と違って、一度に何百人も何千人もに質問することはできないので、1〜5名程度を集めてインタビューします。なので、グループインタビュー(グルイン)と呼ばれています。
狭くて深いリサーチのポイント
メリット:ターゲットの本音を知ることができる
デメリット:インタビューする人間のスキルによって、回答の質が変わる
用意した質問をただ読み上げるだけにならないように気をつけてください。
インタビュー調査は謝礼を用意したり場所を用意したり、何より時間と労力がかかるので、用意していた質問をするだけならアンケート調査の方がコスパが良いからです。
インタビュー調査が効果的な理由
決まった設問に答えてもらうだけでは、本当の心の内は引き出せません。
インタビュー形式によって、回答者自身が気づけていない「買う理由」や「買わない理由」を引き出すことができます。
人は本音を話しません。自分でもその認識がないことも多いです。
例えば
デザインにこだわりたいと思っていても、実際に買ったものを質問すると、安いからそれを選んでいたということが分かったりします。
「素材が丈夫だから」と言ってブランド物の服を着ている人の真の目的は、「周りから羨ましがられたい」とか、「自分はブランド物を身に着けるにふさわしい人間だと感じたい」とか、そういうものだったりします。
自分自身がそう思っていたことが、購入の決め手になっていないことはよくあります。
なので、インタビュアーが相手のリアクションに応じて、その発言や行動の裏側にある真理を読み解くための、追加の質問ができるかどうかで、リサーチで得られる結果が変わります。
ターゲットが本当に求めていることが分かれば、それを満たすための商品を作れば買ってもらえます。
どういう考え方を持った人なのかを知ることで、商品を売っていくときのコミュニケーションも作りやすくなります。
投資対効果が高いので、小さな企業でも大きな企業でもおすすめのリサーチ方法です。
メモ
インサイト:行動の背景にある購買意欲を促す潜在的な欲求のスイッチ
③超狭くて超深いマーケティングリサーチ
いろいろなリサーチ法はありますが、まずこれをやってほしいのが「自己リサーチ」です。
なぜなら
- 他人のことよりも自分のことの方がよく分かるから
- 自分が必要な商品だと思えていなければ、人には売れないから
- 今すぐにできるから
何か商品を売るとき、自分自身がそれを良いものだと思えていなければ、人に売ることはできません。
もちろん女性用の下着メーカーでマーケティングしている男性もいると思います。
その場合は、自分自身が顧客の立場になって、自分ごととして考えることが大切です。
自分のための下着を探している女性に憑依する感じです。
例えば
- なぜ今持っている下着ではダメなのか
- 今持っている下着より良い下着とはどういうものなのか
- 今持っている下着の良い点と悪い点は何なのか
など考えることはできます。
この「自己リサーチ」は、これから事業を始める人もすでに商品を持っている人も、今すぐにできるリサーチ法なのでおすすめです。
「自分の主観で考えても大丈夫なの?」と思うかもしれませんが、問題ありません。
いろんな誰かに売ろうとしたら結局売れません。
ターゲットは的、常に1つです。
自分という最も身近で最も理解できる相手に対してリサーチをしているだけの話だからです。
ターゲットの考え方についてはこちらをご参考ください。
おまけ:無料で使える良質なマーケティングリサーチ結果
世の中の動向をマーケティングに生かす場合、国や大企業が行っているリサーチの結果を参考にすることができます。
個人や中小企業ではできない規模のリサーチをしているので、全体像を掴むためには利用できます。
ターゲットについて知るというよりは、大きな世の中の流れを知ることで、今後向かうべき方向を間違えないようにするというような使い方になります。
例えば
- 地方の人口は減少しているので、都心に出店しよう
- Youtube利用時間が伸びているので、Youtubeチャンネルを解説して情報発信しよう
- オンライン広告の成長率が高いので、オフライン広告の予算を削減しよう
など。
ファッションのトレンドに合わせた商品作りをするのも、世の中の動きを元にマーケティングの向かうべき方向を決めている例ですね。
成長する市場でビジネスをするのが、成功するための要素の1つです。
理想的なターゲットの見つけ方|3つのマーケティングリサーチ法 まとめ
マーケティングリサーチには大きく3つの方法があります。
ポイント
- 広くて浅いリサーチ
- 狭くて深いリサーチ
- 超狭くて超深いリサーチ
それぞれ、目的に合わせて使い分ける必要があります。
全体的な傾向や施策結果を知りたい場合は、アンケート調査による広くて浅いリサーチ。
ターゲットの心の内を知りたい場合は、インタビュー調査による狭くて深いリサーチ。
手っ取り早く効果的にやりたい場合は、自己調査による超狭くて超深いリサーチ。
多くの企業にとって効果的なリサーチは深いリサーチです。
知り合いに頼むとか、まずは自分を振り返ってみるとか、お金をかけないやり方で十分です。
必ずヒントが見つかるので、是非やってみてください!