事業が大きくなると、マーケターの仕事はマネジメントになってきます。
いろんな施策を同時に動かしていくことになるので、1人では回しきれず、施策毎に担当をつけることになるからです。
社内社外含めて、チームメンバーに自分たちのスキルを発揮して、成果を出せるようにフォローしていくことが主な仕事になります。
私たちもそうですが、やる気のある時とない時で出せるパフォーマンスは変わります。
悩みがある時はやる気が出ませんよね。
人の悩みのほとんどが人間関係から来ていると言われています。
上司と部下、マネージャーとメンバーとの間の人間関係がうまくいっていれば、お互いに仕事の悩みはなく、モチベーション高く仕事に取り組めます。
ですが、多くのマネージャーはこう悩んでいます。
- メンバーのモチベーションをどうやって上げればいいのか?
- どうすればもっと積極的に成果を出しに行ってくれるのか?
- メンバーの失敗を指摘したらやる気を失って仕事が進まなくなった…
- 結果を褒めたのに期待したようなやる気を出してくれない…
など。
今回は、メンバーのモチベーションを上げて、主体的に動いてもらえる状況を作るために使える、褒め方と叱り方についてお伝えします。
目次
モチベーションを上げるためには、相手の人格を褒める
褒めるとは、その人やその人の行動を優れていると伝えることです。
ですが、メンバーのモチベーションを上げるためには、行動ではなくその人自身を褒めることが大切です。
なぜなら、人格を褒められると「自分はそういう人間だ」と感じる力が働き、その思い込みに合わせた行動を取るようになるからです。
人は「自分はこういう人間だ」という思い込みを持っています。これを「アイデンティティ」と呼びます。
そして、そのアイデンティティにあった行動をとります。
例えば
- 自分は優しい人間だと思っている人は、困っている人を積極的に助けようとします
- 自分は健康を気遣っている人間だと思っている人は、暴飲暴食をしません
- 自分はかっこいい人間だと思っている人は、身だしなみに気を使います
そして人は自分の人格を褒められると、「自分はその人格を持ち合わせている人間だ」と感じ、引き続きその人格に合わせた行動をとってしまいます。
その結果、あなたが評価した行動を引き続き取ってくれるようになり、良い結果を出し続けられるようになるのです。
これを証明した実験があるのでご紹介します。
人格を褒めることが相手に与える影響を調べた実験
ビー玉で遊んでいる子供たちに、友達にビー玉を手を出す分けてもらいました。
Aチームの子供
「君は良いことをした。人の役に立つことをした。素晴らしい!」と行動を褒めました。
Bチームの子供
「君は良いことをした。人の役に立てる子だ。素晴らしい!」と人柄を褒めました。
2週間後、Aチームの子供の10%、Bチームの子供の45%が、入院をしている子供を元気付けるためのプレゼントをした。
つまり、人格を褒められた子供は、その人格にふさわしい行動を取ろうとしたことがわかります。
逆に、行動を褒められた子供は、その行動を続けようというモチベーションがわかなかったことがわかります。
なので、良い行いを継続してほしい時は、相手の行動を褒めるのではなく、その行動をとった相手自身を褒めるようにしてください。
例えば
- よくまとまった良い資料だ。ここまできっちりとした仕事をしようとする姿勢が素晴らしい!
- この仕事を受注できたのは、あなたがクライアントのことを真剣に考えていたからです
- Bさんの仕事を手伝ってくれてありがとう。あなたの心遣いがチームに良い影響を与えてくれました。
など。
文章にするとちょっとこそばゆい感じがしますが、伝えられて嫌な気分になる人はいないと思います。
本人としては嬉しくなり、褒められた自分を体現するための行動をまた取ろうと思うので、良い行動が続く力になります。
モチベーションを下げさせないためには、相手の行動を叱る
褒めるのはできても、叱ることができないマネージャーは多いです。
叱られて気分が良くなる人はいないので、「叱ること=マイナス」なことと、叱る側も叱られる側も思っています。
でも、必ずフィードバックは必要です。
なぜなら、全てうまくいくことはないからです。
あなたの描いた通りに、全てうまくやってくれるチームを持っている人なんていないと思います。
なので、マネージャーとして自分の描いたマーケティングを実現させるためには、メンバーを叱ることは避けては通れません。
マネージャーとしてのスキルがない人がメンバーのマネジメントをする時、相手の人格否定をよくしてしまっています。
例えば
- なんでこんなのもできないの?新人でももっとマシな仕事するぞ?
- お前はいつも仕事が遅いよな
- やる気あんのか?
など。
これらはその人自身に対しての指摘となります。
なので、人格を否定された相手はモチベーションが下がり、やる気を失ってしまいます。
では、どうやってしかれば良いのか?
それは、相手の行動を叱ることです。
例えば
- プレゼンに負けてしまったのは、提案の根拠となる情報の集め方が悪かったからだ
- クライアントからクレームが出たのは、あの発言がまずかったからだ
- 入稿ミスがあったのは、チェックフロー通りのチェックができていなかったからだ
など。
その人のとった行動にフォーカスさせることで、自分自身ではなく、自分のとった行動が叱られている状態になります。
そうすれば、自分もその行動を客観的に見ることができて、何がダメで、どうすれば良いかを考えられるようになります。
ダメな上司は同じ間違いをさせないために、部下の意識を変えさせようとします。
そのため、相手のとった行動を反省させようとして、人格否定に走ってしまいます。
誰もわざと失敗しようとは思っていません。
やり方がまずかったり、判断が悪かったことで、失敗を起こしてしまいます。
自分の行動が失敗だと分かった時、本人はすでに反省しています。
なので、マネージャーのあなたがやるべきは、反省をあなたに対して反省の気持ちを表現させることではなく、同じ失敗が起こらないようにするための、行動の変化をさせることです。
そのためには、メンバーが悪かったのではなく、とった行動が悪かったということを明確に伝えて、どうすれば同じ過ちが起こらないかを一緒に考えることです。
その出発点として、行動を叱るが必要になります。

行動に影響を与える5つの意識の階層
なぜ、人格を褒めるとモチベーションが上がり、行動を褒めてもさほどモチベーションが上がらないのか?
人格を叱るとモチベーションが下がって、行動を叱るとモチベーションが下がらないのか?
その理由についてお話しします。
人には行動に影響を与える5つの意識の階層があります。
行動に影響を与える5つの意識の階層
- 存在(自分自身)
- 価値観(大切にしていること)
- 能力(できること)
- 行動(やったこと)
- 環境(他の人、場所、道具)
存在が最も影響力が強く、環境が最も影響力が弱いです。
なので、存在や価値観に褒めると言うプラスの影響を与えると、その影響が強く働き、モチベーションが上がります。
逆に、行動や環境を褒めても、それが行動に与える影響が弱いので、モチベーションは上がりません。
例えば
- 受注おめでとう!プレゼンの競合が実績のない会社で助かったな!
- 今月は売上2倍です!たまたまニュースに取り上げられたのがよかったな!
- 新規顧客が増えたのは、あなたがあの広告を選んでくれたからです!
など。
そんなに嬉しく感じないですよね(笑)
行動への影響力の強い存在や価値観に対して叱ると言うマイナスの影響を与えると、その影響が強く働き、モチベーションが下がります。
逆に、行動や環境を叱っても、それが行動に与える影響が弱いので、モチベーションは下がりません。
例えば
- 分析結果が甘いな。今使ってるツールのこの機能がいけてないよね。
- 資料を探すのに時間がかかってるね。デスクをが散らかっているからだね。
- 新規顧客が減ってるよね。PDCAのサイクルを見直してみようか。
など。
相手自身にフォーカスさせなければ、叱られているという感覚すら覚えないフィードバックになります。
どのフィードバックも「では、どうする?」という次のアクションに繋げやすい伝え方になっています。
すると、マイナスをプラスに変えるための動き方ができるようになり、モチベーションを下げさせることなく、メンバーのパフォーマンスを高めることができます。
マーケティングチームのモチベーションを上げる褒め方・叱り方 まとめ
私たちマーケターの仕事は、「売れる仕組み」を作ることです。
事業が大きくなり、やることが多くなると、チームで取り組む活動になっていきます。
その時、マーケターはマネージャーとしてチームを動かす重要な役割を担うようになります。
チームのパフォーマンスを高めるためには、メンバーのモチベーションコントロールが大切です。
メンバーのモチベーションを高めるためには、相手の人格を褒めてください。
メンバーのモチベーションを下げさせないためには、相手の行動を叱ってください。
人には、行動に影響を与えている5つの意識の階層があります。
行動に影響を与える5つの意識の階層
- 存在(自分自身)
- 価値観(大切にしていること)
- 能力(できること)
- 行動(やったこと)
- 環境(他の人、場所、道具)
存在や価値観を褒められれば、プラスに大きく影響します。逆に、否定されれば、マイナスに大きく影響します。
なので、褒めるときは人格を褒めるようにします。
行動に対して影響力を持つので、褒められた相手の中に、引き続きその良い行動を取ろうという力が生まれます。
するとモチベーションは高まり、良い行動を取り続けてくれるという好循環を作ることができます。
行動や環境を褒められても、プラスには大きく影響しません。逆に、否定されても、マイナスに大きく影響することはありません。
なので、叱るときは行動や環境を叱るようにします。
自分と叱られている対象を切り離すことで、叱られていることを客観的に取られられるようになります。
叱られた側も「その失敗をどう次に活かせば良いか?」という前向きな捉え方ができるので、モチベーションも下がらず、前向きに行動できるようになります。
この「人の行動に影響を与える5つの意識の階層」を覚えておけば、どこにフォーカスをして褒めたり、叱ったりすれば良いかがわかります。