マーケティングの仕事をしていると「インサイト」という言葉を耳にすることがあると思います。
でも多くの人が、顧客のことをよく知るくらいの意味合いで理解しています。
「顧客のインサイトを調べるためにアンケート調査をしよう!」なんていう話があったりもします。
インサイトとは単なる顧客情報ではありません。
今回は、インサイトを知ることがなぜマーケティングに必要なのか、どうすればインサイトを知ることができるのかをお伝えします。
目次
インサイトの意味
インサイトとは、洞察と訳されます。
普段使わない言葉なのでピンとこないですよね。
見通すこと、見抜くこと、という意味です。
マーケティングでは、「顧客の内なる欲求」を見抜くことの意味で使われています。
- なぜ買わないのか
- 何があれば買うのか
これがわかれば、売れる商品にできると思いますよね。
なので、多くの企業が「顧客の内なる欲求」を理解しようと、マーケティングリサーチをしています。
顧客が商品を買う理由
顧客は未解決の問題を解決したり、未達成の目標を達成する手段として商品を買います。
問題を抱えたままだったり、目標が達成できていない状態の時に不満を感じます。
例えば
- 10kg痩せたいのに、3kgしか痩せていない
- 収入をアップさせたいのに、給料が上がらない
- 綺麗な部屋に住みたいのに、ぜんぜん片付かない
など。
その不満を満たすために、商品を通して価値を手に入れます。
例えば
- 10kg痩せられる2ヶ月のトレーニングプログラム
- 給料がアップする転職支援
- 2時間で部屋を綺麗に片付けてくれるお掃除サービス
など。
マーケティングではこの商品が提供する価値を「ベネフィット」と呼びます。
ベネフィット…メリット、利便性。商品を使うことで手に入るプラスの結果のこと。
なので、顧客の不満を知ることで、それを解消する価値を知ることができます。
その価値を提供できる商品を作ることが、マーケティングを成功へと導きます。
顧客の不満を知るために、マーケティングリサーチは行われてきましたが、今まで通用していたやり方では通用しなくなってきています。
その理由についてお話しします。
マーケティングリサーチの変化
マーケティングは、買い手が「欲しい!」と感じて「買わせて!」と言ってくれる仕組みを作ることです。
買い手が何を求めているのかを知らなければ、求めているものを提供できないので、顧客をよく知ることが始めの一歩になります。
昔のマーケティングリサーチ
昔は、顧客の求めているものを知るためにインサイトは必要ありませんでした。
なぜなら、不満が表面化していたからです。
圧倒的にモノが足りていなかったので、みんなが必要としているものは明らかでした。
品質の高くない商品も多かったので、品質がよくて値段が安い商品をみんなが求めていました。
なので、アンケートを取ればどういう商品が必要かを知ることは簡単でした。
需要を捉えて、それを満たす商品を作ることがマーケティングでした。
需要…特定の商品に向けられた手に入れたいという欲求
今のマーケティングリサーチ
でも今はどうでしょうか?
必要なものはほぼ満たされていると思います。
しかも、品質の高い商品を安く手に入れることができます。
どんなものでも「だいたいOK」な状況があります。
すでに満たされているので、需要があまりないように感じられます。
モノを欲しがる人が減っているという話も聞いたことがあると思います。
なので、需要自体を売り手のアプローチによって作り出す必要性が高まっているのが今の時代です。
本人も気づけていない内なる欲求を知ることで、相手の自覚できていない不満をあぶり出す必要があります。
なぜマーケティングでインサイトが重要なのか?
需要を作り出すために、買い手本人も自覚できていない欲求を満たす価値を提供する必要があります
そのため、インサイトは必要になります。
「あなたの不満はなんですか?」
こう質問されて出てくる答えは、表面的な不満です。
「だいたいOK」な時代で、本当の不満を抱えている人は多くないからです。
「不満はなんですか?」と質問されて答えられる不満は、世の中的にそう言われていたり、何がなんでも叶えたいものでなかったりします。
これは回答を頭で考えて答えているからです。取り繕った答えだと言えます。
その表面的な不満をもとにマーケティングプランを立ててしまうと失敗します。
例えば
ある商品を買わない理由を聞いたとします。
多くの回答者が「高いから」「よく知らないから」と答えます。
その時、多くの企業が「安くしよう!」「認知拡大のプロモーションをしよう!」という対策に走ります。
そして、失敗します。
自分が喉から手が出るくらい欲しいものだったら、いくらでも手に入れたいと感じますよね。
逆にいらないものなら1円でも高いと感じます。
高いから・知らないからが理由ではなく、「自分にとって価値のない商品だから」が本当の買わない理由です。
本人も言語化できていない「欲しくない理由」を知ることができれば、「欲しくなる理由」を作ることができます。
そして、その「欲しくなる理由」のある商品を作れれば、そこへ需要を向けることができるようになります。
これがインサイトが必要な理由です。
マクドナルドが失敗したリサーチ
マクドナルドはアンケートをもとに消費者の求めていることを探しました。
その結果、「ヘルシーな食べ物がないからマクドナルドへは行かない」という多数の意見を参考にして、「サラダマック」を発売します。
ですが、思ったような販売ができず販売は中止となりました。
その後発売した、ヘルシーとは逆をいく”より肉厚にボリューム感を出したハンバーガー「クォーターパウンダー」”がヒットします。
消費者の声を聞くマーケティングリサーチをして、その通りに商品を作ったのになぜ売れなかったのか…
それは消費者の本当の心の声が、アンケートには現れないことが理由です。
ヘルシーなものは食べたいけど、それをマクドナルドに求めていた人はいなかったという見方もできますし、
ヘルシーなものがあればいいなと思っていた人も、いざマクドナルドでヘルシーなハンバーガーが発売されたら、それを食べたいとは思わなかったという、想定と結果とのズレが生まれたという見方もできます。
インサイトの目的
マーケティングインサイトの目的は、ターゲットの「無自覚な欲求」を知ることです。
その「無自覚な欲求」を満たす価値を、あなたの商品が提供することができれば、あなたの商品は買ってもらえます。
日常生活をまともに送れない人は少なくなりました。でもどこか満足いっていないという人は多いです。
本人がその欲求を自覚できていれば、その欲求を満たそうと行動しているはずです。
でも、欲求を自覚できていないので満たすための行動が取れず、なんとなく不満という状態になっています。
その「無自覚な欲求」を知ることで、それを満たすための商品を作ることができ、選ばれる商品にすることができます。
インサイトの見つけ方
人が「買いたい!」と感じるために必要な「欲しい!」という感情を作るためには、満たせていない不満を見つけます。
不満がある状態=価値を手にできていない状態だからです。
インサイトを見つけるための型あります。
インサイトの見つけ方
- 好きなことを聞く
- その理由を聞く
- 無自覚な不満に変換する
- 不満を解消するための付加価値を考える
まず、相手の不満をあぶり出すために、まずその反対の「何に満足しているか」を調べます。
そのために、ターゲットが「何をしている時が好きか」「どんな状態・状況がお気に入りか」を聞きます。
そして、なぜそれが好きなのか、お気に入りなのかを聞きます。
それによって、相手がどういうことにプラスの感情を持つのかという価値観がわかります。
この価値観と反する状況が、今のあなたの商品で起こっているから、ターゲットはあなたの商品を「欲しくない」と感じています。
それが「無自覚な不満」です。
なので、あなたの商品が持つ特徴で、ターゲットの価値観とどんな逆の状況があるのかを考えます。
そして最後に、この「無自覚な不満」を解消するためのアイデアを考えます。
不満がなくなれば、あなたの商品を買う理由が生まれます。
アイデアの出し方のポイントは、ターゲットが好きなこと・お気に入りの状態を商品の提供する価値に盛り込むことです。
例えば
- 好きなカラーで統一することがお気に入りな人がいれば、カラーバリエーションを作る
- 自分の成長を感じることが好きな人がいれば、達成度が分かったり評価してもらえる仕組みを作る
- 自分で作ることがお気に入りな人がいれば、カスタマイズ要素を組み込む
など。
具体的な例があるとインサイト発見法の流れがつかみやすいと思うので、マクドナルドの例で紹介しますね。
マクドナルドが成功したインサイト
アンケートリサーチの結果、「ヘルシーなものが食べたいからマクドナルドには行かない」という意見を市場の不満として捉えて、それを解消するためのアイデアとして「サラダマック」を発売しました。
その後、成功したクォーターパウンダーでは何が違っていたのかを、インサイトの型を用いて解説します。
好きなこと・気に入っていることは、健康に気を使った食事をしているけど、たまに高カロリーな食事を取ること。
それが好きな理由は、ヘルシーな食事を続けるのは結構手間もかかるし、外食とかだとお店を選ぶのも大変だったりして、ちょっとストレスを感じることもあるので、そのストレスを発散できる時に幸せを感じる。
たまに高カロリーな食事にがっつきたいと思っているけど、マクドナルドにはこの願いを叶えてくれるメニューがない。
通常のメニューよりも、肉厚で食べ応えのあるハンバーガーを作る。
→クォーターパウンダーを開発
こういう流れになります。
もちろん解釈の仕方やアイデアの方向で、いろんな答えが導き出されます。
ポイントは、ターゲットの好きなこと、お気に入りなことから、そこに隠されている無自覚な欲求を探るところにあります。
無自覚な欲求がわかれば、それを叶えるプラスの価値を商品に加えることで、求められる商品へとできます。
この型は、こちらの書籍で紹介されている内容なので、インサイトについて詳しく学びたい方は是非チェックしてみてください⬇︎
インサイトとは|すぐに使える顧客の欲求の見つけ方を伝授! まとめ
インサイトとは、見通すこと、見抜くこと、という意味です。
マーケティングでは、「顧客の内なる欲求」を見抜くことの意味で使われています。
ターゲットが買わない本当の理由を知ることで、買いたくなる商品にすることができます。
そのために、ターゲットも自覚できていない欲求を探るのがインサイトです。
直接的に「不満はなんですか?」と聞いても、表面的な不満しか返ってきません。
自覚できている不満は本当の不満ではないからです。
私たちマーケターは、需要を作り出すことが仕事です。
需要とは、特定の商品に向けられた「欲しい気持ち」のことです。
なので、今存在しない「欲しい気持ち」を引き出すために、本人も自覚できていない欲求を知ることが大切になります。
インサイトを見つける方法には型があります。
インサイトの見つけ方
- 好きなことを聞く
- その理由を聞く
- 無自覚な不満に変換する
- 不満を解消するための付加価値を考える
①~②の質問をターゲットにすることで、「無自覚な不満」を炙り出して、その不満を解消するための価値を考えるのがインサイトを見つけるための作業です。
アイデアの導き出し方には慣れが必要です。
最初は、「これって、表面的な不満と表面的な欲求やん…」と感じるような結果になることも多いと思います。
そうならないためには、インタビュー時により具体的により深く相手のコメントをもらうように質問をすることです。
- なぜですか?
- 他にはどういう状況でそうなりますか?
- なぜそう感じたと思いますか?
など、相手が意識できていない部分まで潜り込むことで、相手も気づけていない自分を見つけてもらうことができます。