マーケティングを始める時に考えなければいけないのが、「誰に売るのか、何を売るのか、どのように売るのか」の3つです。
その中でも、「誰に売るのか」は最も大切です。売る相手がわかっていなければ、買ってもらえる商品も作れないし、その届け方もわからないからです。
「この商品は誰が買うんですか?」という質問に対して、明確に回答できる企業は多くありません。
「20代の感度の高い女性ですね」「健康を気遣う中高年男性です」などと、あやふやな表現でしか答えられなかったりします。
誰に売るのかが具体的でなければ、「何を売るのか」「どのように売るのか」も具体的にはできません。
その結果、あやふやな商品とあやふやな売り方しかできず、誰にも見向きのされないマーケティングが出来上がります。
この記事では、マーケティングを学ぶにあたって知っておくべき、ターゲットの構成要素についてお伝えします。
それでは始めましょう!
目次
ターゲットの構成要素とは
構成要素とは、物事を形づくっているパーツのことです。ぼんやりとした物も、1つ1つのパーツに分解することで、具体的な物へと変わっていきます。
カレーライスの構成要素は、お米・カレールー・お肉・にんじん・玉ねぎ・じゃがいもです。
カレールーはさらに、カレー粉・スパイス・小麦粉・塩や砂糖などの調味料に分解できます。
分解することで、カレーという混ざり合った物体が、1つ1つの材料として明らかになります。
カレーを食べたことがない人が作るカレーには、訳のわからない材料が入っていると思います。でもどんな材料で作られているのかが分かれば、あるべき状態へと近づけられます。
ターゲットも同じで、それを構成する要素があります。基本の要素を押さえておくことで、初心者でもズレないターゲット設定ができるようになります。
ターゲットには4つの構成要素があります。
- 課題
- 価値観
- 属性
- 状態
この4つの情報を集めて整理することが、マーケティングリサーチです。
では、それぞれ紹介していきます。
ターゲットの構成要素① 課題
ターゲットの構成要素1つ目は「課題」です。
課題とは、課せられた問題という意味です。ただそこにある問題ではなく、解決すべき問題と言えます。
例えば
- 売上を2倍にしなければいけない
- 肌の老化を抑えなければいけない
- 結婚式までに10kg痩せなければいけない
- 収入をアップさせるために転職しなければいけない
- 海外で働くために語学を身につけなければいけない
など。
問題のままにしておくと自分のマイナスになるので、解決すべき問題だと捉えられているのが課題です。
ではなぜ、多くの人が課題を抱えて生活しているのでしょうか?
課題が生まれる理由
それは、理想と現実とのギャップを感じているからです。
なりたい自分・あるべき自分と、今の自分とに違いがあるから、その差を埋めて理想的な状態になりたいと感じます。
そこに課題が生まれます。
例えば
- もっと豊かな生活を送りたい、だけど今の安月給ではできない
- もっとモテたい、だけど今の太った体型では見向きをされない
- もっと稼ぎたい、だけど何のスキルも持っていない
- もっと羨ましがられたい、だけど人に自慢できるものがない
- もっと自信を持ちたい、だけど失敗ばかりしている
- もっと自由な時間が欲しい、だけど仕事と家事でカツカツ
- やりたくない仕事から逃れたい、だけど他に雇ってもらえるところがない
など。
より良くなりたい、そのために今のままではダメだ、と感じるから「解決すべき問題=課題」が生まれます。
ではなぜ、私たちがより良くなりたいと思うのかについてお話しします。
人がより良くなりたいと思う理由
人間にはいろんな欲求があります。3大欲求と呼ばれるものを聞いたことがあるかもしれません。
3大欲求とは、食欲・睡眠欲・性欲のことです。
これは極めて動物的な欲求です。もちろんこれらが私たちを強く支配しているのですが、人間にはこれ以外の独自の欲求があります。
人によって様々なのですが、9つの根源的な欲求に集約できます。
9つの根源的な欲求
- 生き残り、長生きしたい
- 食べ物、飲み物を味わいたい
- 恐怖、痛み、危険から逃れたい
- 性的に交わりたい
- 快適に暮らしたい
- 他人に勝り、後れを取りたくない
- 愛する人を気遣い、守りたい
- 社会的に認められたい
- 人生を楽しみたい
人はこれら全ての欲求を持ち合わせていて、人によってどれをより重視しているかが違います。
根源的な欲求があるからこそ、それを満たしたいという感情が生まれ、それを満たすための課題を生み出しています。
ターゲットの課題が重要な理由
ターゲットを決めるための最も重要な要素が「課題」です。
なぜなら、人は課題解決の手段として商品を買うからです。課題が解決されれば、求める理想的な状態になれます。
つまり商品を買うということは、理想的な自分になるための対価を支払っていると言えます。
多くの人が課題を抱えている理由は、解決のためにやるべきことがわからなかったり、解決のためにやるべきことに取り組めていないからです。
なので、買い手の課題を示してあげたり、解決の手助けをしてあげたりすることで、商品を買う理由を作っていくことがマーケティングでは大切になります。
ターゲットの構成要素② 価値観
ターゲットの構成要素2つ目は「価値観」です。
価値観とは、物事の見方や判断基準のことです。その人が何を好んでいたり、何を大切にしているかで変わります。
例えば
- 安いものはすぐに壊れて結果的に損をするから買わない
- 人と同じものは自分の個性を壊すから買わない
- みんなが使っているものが安心するから売れているものを買う
- カラーはモノトーンで揃えたい
- シンプルよりゴテゴテのデザインがいい
- 人から直接買いたいからネットで物は買わない
など。
同じ課題を抱えた人でも、価値観の違いによって買う人と買わない人が分かれます。
ターゲットの価値観が重要な理由
価値観は人の判断を左右します。商品を買うかどうかもその人の価値観によって決まるので、ターゲットを決めるときにどんな価値観の人なのかを分かっておくことが大切です。
例えば
お洒落な服を着れる自分になりたい(理想)、そのために10kg痩せなければいけないという課題を抱えている2人の女性がいます。
この2人に、2ヶ月で10kg痩せられる集中トレーニングを売ったとします。カロリーコントロールと代謝アップのためのトレーニングを専属のトレーナーが二人三脚でやるという商品です。
短期間で10kg痩せられるのは、2人の女性どちらもが手に入れたい結果です。
1人は自分の求める結果が手に入ると思ったので、2ヶ月で10kg痩せるトレーニングプログラムに申し込みました。
でももう1人は「運動は苦手」「食事を我慢するなんてできない!」という価値観を持っていたため、2ヶ月で10kg痩せられる商品を買いませんでした。
このように、買い手の価値観によって必要な商品でも買うかどうかが変わります。
商品を売る相手がどういう判断基準を持っているかがわからなければ、商品は買ってもらえません。
ターゲットの構成要素③ 属性
ターゲットの構成要素3つ目は「属性」です。
属性とは共通して備わっている特徴の意味で、その人のプロフィールを表す項目のことです。
例えば
- 性別
- 年齢
- 居住区
- 職業
- 世帯年収
- 家族構成
- 既婚未婚
- 子供有無
など。
マーケティングの用語的には、デモグラフィックスと呼ばれるものです。
属性情報は、ターゲットの外面的特徴を具体的に表すための材料として使います。
「ターゲットの年齢は20代で、性別は男性だ」という使い方になります。
逆の「この属性の人は、こういう商品を買う(ex.20代のビジネスマンは安価なスーツを買う)」という考え方は危険です。
なぜなら年代や職業などで、その人の必要としているものが決まるわけではないからです。
詳しくは、「マーケティングで必ず知っておくべきターゲットの話」の間違ったターゲットのところでもお伝えしているので参考にしてみてください⬇︎
ターゲットの属性が重要な理由
属性情報は広告媒体を選ぶ時に活用できます。
メディアが持っているユーザープロフィールを元に、広告を出すことができるからです。
例えば
ターゲットの年齢が35歳で都内で働くビジネスマンだとすると、30代男性を指定したり、ターゲットがよく見ているだろう経済メディアを指定して広告を出すことができます。
あなたのターゲットの属性を元に広告の出し先を決めれば、ターゲットに出会えるだろう場所やタイミングで広告ができるので、効果的なプロモーションになります。
手当たり次第に広告していては、広告費を無駄にしてしまうので、商品を買ってもらえる可能性の高い相手に対して広告することが大切です。
GoogleやFacebookなどのプラットフォームが持っている1人1人の大量の行動データによって、個人の属性情報を活用できるからこそできる広告です。
昔の話
web広告登場以前は、30代男性がよく見ている夜のニュース番組や深夜のバラエティ番組でCMを流す、ビジネス雑誌や男性向けファッション誌などに出稿するというような媒体の選び方をしていました。
媒体側が持っている属性情報はアンケートなどで集められる住所・年齢・職業などの情報なので、「だいたいこんな感じ」というざっくりしたものを元に、ターゲットに接触できる媒体を選んでいました。
ターゲットの構成要素④ 状態
ターゲットの構成要素4つ目は「状態」です。
人が商品を買うまでには、5つの状態があります。
人が商品を買うまでの5つの状態
- 何も知らない
- 問題は知っている
- 解決策を知っている
- 解決のための商品を知っている
- 特定の商品とその売り手を知っている
必ず、「何も知らない」状態から始まり、「特定の商品とその売り手を知っている」状態になってから商品を買います。
自分に必要なものがわかっていないのに、商品を買うことしません。
誰が売っているのかを知らなければ、商品を買うことはできません。
解決策を知りたい人に、商品を見せても買いたいとは思いません。
ターゲットを顧客へと導くためには、相手の状態に合わせたアプローチが必要です。
では、5つの状態についてそれぞれお伝えします。
1.何も知らない
第1段階の何も知らない人は、悩みをただ抱えている状態の人です。
例えば
- なぜだかモテない
- 給料が上がらない
- 将来が不安だ
など。
ただ漠然とうまく行かない状況を憂いている人です。
なぜうまく行かないんだろうと感じているので、うまく行かない原因を知りたいと思っています。
2.問題は知っている
第2段階の問題は知っている人は、悩みの原因を知った状態の人です。
例えば
- モテないのは、女性の前で楽しい会話ができないからだ
- 給料が上がらないのは、今の会社の報酬体系が良くないからだ
- 将来が不安なのは、貯金がないからだ
など。
なぜうまくいっていないかはわかっているけど、どうしたら良いかわからない人です。
問題の解決策を知りたいと思っています。
3.解決策を知っている
第3段階の解決策を知っている人は、問題の解決方法を知った状態の人です。
例えば
- 女性の前で楽しく会話するためには、場数を踏むことが必要だ。身なりを整えることも必要だ。お洒落な場所も知っておいた方が良い。
- 会社の給与体系を変えることはできないので、転職しなければいけない。副業をすることもできる。
- 将来資金を貯めるために、家計を見直そう。投資もした方が良い。もっと稼ぐためのスキルも必要だ。
など。
何をすれば良いかはわかっているけど、具体的には行動できていない人です。
自分にあった方法や効果的・効率的な方法を知りたいと思っています。
4.解決のための商品を知っている
第4段階目の解決のための商品を知っている人は、解決策となる商品を知っている人です。
例えば
- 女性と会話する場数を踏むためには、たくさんの女性とマッチングできるアプリを利用すれば良い
- 転職するためには、人材募集をしている企業を紹介してくれる転職エージェントに登録すれば良い
- 家計を見直すためには、ファイナンシャルプランナーに相談すれば良い
など。
課題を解決するための近道となる方法を選択できている人です。
選んだ解決策の中で、自分にとってベストな商品が何かを知りたいと思っています。
5.特定の商品とその売り手を知っている
第5段回目の特定の商品とその売り手を知っている人は、自分が買うべき商品を絞り込んでいる人です。
例えば
- 自分と同じ20代のユーザーが多いこのアプリにしよう
- 営業職の採用に強いこの転職エージェントにしよう
- 口コミで評価の高いこのファイナンシャルプランナーにしよう
など。
いろんな情報を集めた結果、買う商品を決めている人です。
本当に買うべきか、失敗はしないかと迷い、お得に買う方法はないかなどを知りたいと思っています。
ターゲットの4つの構成要素 まとめ
ターゲットには4つの構成要素があります。
課題・価値観・属性・状態。
全ての要素を材料として、どんなターゲットを自分たちの顧客にしていくのかを考えるのが、マーケティングターゲットの決め方です。
組み合わせ次第でいろんなターゲットが作れます。
ただし、常に的は1つです。
「それじゃぁ、たくさんの人に商品を売れないじゃないか!」という声もあると思います。
その通りです。1つの的だけでは事業を大きくしていくのには不十分です。
1人のターゲットに売ることができれば、次のターゲットを設定して売ることになります。
一度に大量の人に買ってもらおうとするから、誰にも刺さらないコミュニケーションになり、売れないマーケティングになってしまいます。
確実に売れる相手を次々に作り出していくことで、売れる仕組みを大きく育てていくのが、マーケティングの王道です。
商品に必要な3つの要素については、こちらで詳しく解説しています⬇︎