ビジネスは投資回収です。
お金や労働力や時間を使って商品を作ったり、商品を売ったりして、対価として代金を受け取る活動です。
どのタイミングでいくら投資に回せるのかがわからないと、うまく投資することはできません。
事業に投資をし続けるためには、LTVを知る必要があります。
今回は、LTVを知るために必要な知識をお伝えします。
目次
LTVとは
LTVとは、Line Time Valueの略で、「顧客生涯価値」という意味です。
特定の期間内に、1人の顧客がどれくらいの売上をもたらすかということを表します。
例えば
1,000円のお弁当を売っていて、1ヶ月に10回買ってもらえる時、1ヶ月のLTVは10,000円となります。
これが1年ならLTVは120,000円となります。
LTVの期間の考え方
多くの場合、1年間を期間として扱います。これは事業年度が1年で区切られているので、計画を作る時に使いやすいためです。
規模の小さな事業では、運転資金が多くないので、投資回収を早める必要があります。
商品を売るための広告にお金をかけたら、すぐにその影響で商品が売れなければいけないということです。
例えば
事業に使えるお金が1,000万円あり、事業を運営していくために毎月かかるお金が50万円だとします。
手元資金:1,000万円
運転資金:50万円/月
500万円使って広告すれば、利益1,000万円分の商品が売れる時、投資した以上のリターンを得られているので、投資回収としては成立しています。
ですが
利益1,000万円分の商品が売れるのが1年後だとしたら、1年間は事業資金がない状態で事業運営をしなければいけなくなります。
事業運営にかかるお金が月50万円なので、10ヶ月目で事業資金が底をつき、事業はストップします。
半年で利益1,000万円を出せるなら、事業はストップせず、増えた利益を再投資することができます。
半年経った時の状況
手元の事業資金200万円(500万円ー運転資金50万円×6ヶ月)+利益1,000万円=手元資金1,200万円
すると事業は安定するし、次の投資にもお金を使うことができます。
なので多くの企業においては、短期で投資回収することがとても大事です。
LTVが必要な理由
LTVを使う理由は、適切な事業投資ができるからです。
簡単に言い換えると「事業を成長させるために今いくら使って良いか」がわかるようになるということです。
LTVを知るということは、将来の売上を知るということです。
1人の顧客が年間で5回買ってくれると想定できていれば、目標の売上を達成するために、何人の顧客を集めなければいけないかがわかります。
例えば
1個1,000円のお弁当を売ることを考えてみます。
商品価格:1,000円
原価:200円
その他販売のためにかかる費用;500円
利益:300円(利益率30%)
販売のためにかかる費用
家賃、光熱費、人件費、広告費など
1人の顧客に1年間で100回買ってもらえるとすると、LTVは10万円になり、利益は3万円になります。
商品価格1,000円×購入回数100回=LTV100,000円
LTV100,000円×利益率30%=30,000円
同じ買い方をする顧客が1,000人いるとすれば、年間の売上1億円になり、利益は3千万円になります。
LTV100,000円×顧客1,000人=総売上100,000,000円
総売上100,000,000円×利益率30%=利益30,000,000円
1人の顧客が3万円の利益をもたらしてくれて、1,000人の顧客から3千万円の利益が手に入るとわかっていれば、3千万円の利益から1千万円を使って新しい設備を導入したり、集客のための広告費に使ったりすることができます。
さらに
LTVの考え方を使えば、適切な利益の計算ができるようになるメリットもあります。
初めて買ってもらうお客さんには集客のためのコストがかかりますが、2回目以降買ってくれるお客さんには集客のためのコストがかからなくなります。
2回目以降は、商品を気にいれば広告せずとも買いに来てくれるからです。
つまり、費用に見込んでいる広告費が初回販売時の費用にしか含まれなくなるということです。
例えば
500円のその他費用のうち、100円が広告費分の場合を考えてみます。
100円でできる広告があるということではなく、10万円広告に使って1,000個売れれば、1個あたりにかかった広告費は100円になるということです。
広告費100,000円÷販売個数1,000個=1個あたり広告費100円
初めてお弁当を買って、気に入ってまた買いに来てくれた時、広告費はかかっていません。
本来1,000円の商品代金に含まれている100円の広告費が、かからなかったことになります。
ではその100円はどこにいくのか?というと、手元に残るお金になるので、利益300円にプラスされ利益が400円になります。
●初回の販売
商品代金1,000円=原価200円+その他費用500円(広告費100円+広告以外費用400円)+利益300円
●2回目以降の販売
商品代金1,000円=原価200円+その他費用400円(広告費0円+広告以外費用400円)+利益300円+利益100円
つまり、100回買ってもらった時のLTV100,000円に対して、利益が39,900円になります。
初回販売時の利益300円×1回+2回目以降販売時の利益400円×99回=39,900円
もしLTVという考え方を使わなければ、毎月の売上と利益率との単純な掛け算でしか状況を判断できなくなります。
将来的に手に入る売上や利益がわかるようになるのが、LTV最大の利点です。
LTVメモ
家や車などではLTVの考え方はあまり使われません。なぜなら購入頻度が少ないからです。
購入頻度が少なければ、1人の顧客の総売上は商品購入価格と変わりません。
5,000万円の家を買った人のLTVは、5,000万円です。なので、総売上という考え方自体が成立しません。
LTVは1人の顧客の総売上なので、何回買ってもらえるかが大切になります。
LTVを調べる手順
ではどうやってLTVを計算すれば良いのかについてお伝えします。
2つの計算方法があります。
LTVの計算方法
- 売上と顧客数で計算(簡単)
- 商品価格と購入回数で計算(実践的)
それぞれ解説していきいます。
1.簡単なLTVの計算方法 売上と顧客数
この方法は結果からLTVを把握する方法です。
LTVは1人の顧客の売上の総額です。なので「総売上÷顧客数」で平均を出すのが、1番簡単な方法です。
複数の商品を買ってもらっていたとしても構わないので、1人あたりの売上合計を計算してください。
例えば
年間の売上が1億円、お客さんの人数が1,000人だったとします。
この時のLTVは、売上1億円÷顧客数1,000人=LTV100,000円となります。
商品の購入金額が1,000円だとすると、1人の顧客が平均100回商品を買ったことがわかります。
こちらの計算の仕方は、顧客が中心になっていない考え方なので、大まかに把握するために使うときには良いですが、LTVの考え方を活用するためには不向きです。
LTVは顧客を中心に見ていくことが大切なので、次の計算の方法を覚えておいてください。
2.実践的なLTVの計算方法 商品価格と購入回数
この方法は、LTVを予測する方法です。
LTVを計算するために必要なのは、「商品価格」と「購入回数」です。
例えば
1,000円のお弁当を月に4回買う人のLTVは4,000円です。
いくらの商品を、何個買ったかで計算します。
「でも、いくらの商品を何個買ったかは人それぞれなんじゃないの?」と思うかもしれません。
それはその通りで、厳密にはLTVは1人1人違います。
例えば
1,000円のお弁当を月に4回買う人もいれば、月に1回しか買わない人もいます。
その時、LTVは4,000円(1,000円×4回)と1,000円(1,000円×1回)の2つ存在することになります。
「じゃあ、どっちのLTVを使えばいいの?」と思いますよね。
そこで、平均的な購入回数を使います。
4回買う人と1回しか買わない人がいるので、平均購入回数は2.5回です。
●平均購入回数
(4回+1回)÷2人=2.5回/人
なので、平均LTVは2,500円になります。
●平均LTV
商品価格1,000円×購入回数2.5回=2,500円
平均LTVがわかると、目標売上を達成するために必要な顧客の数がわかるようになります。
平均LTVが2,500円の時、月の売上目標100万円を達成するためには、400人の顧客獲得が必要だと計算できます。
目標売上1,000,000円÷平均LTV2,500円=400人
より詳しい事業の状態を把握するときには、商品別のLTVや集客施策別のLTVを使ったりもしますが、まずは全体を把握できるようになれればOKです。
LTVとは?マーケティング使いの必須知識 まとめ
LTVとは、顧客生涯価値のことです。
顧客生涯価値とは、顧客が特定期間内で買った商品の合計金額、顧客あたりの総売上のことです。
1人あたりの年間平均売上額として扱います。
資本力のない企業では半年など投資回収の期間を短くする必要があるので、見込みの売上となるLTVも半年など1年より短い期間で計算します。
計算の方法は、売上を顧客数で割り戻すパターンと、商品価格と購入回数を元にしたものがあります。
LTVとは1人あたりの総売上なので、1人の顧客がいくらの商品をどれだけ買ったのかを元に計算する方が望ましいです。
人によってLTVは変わるので、事業全体のLTVを把握するために、平均LTVを元にLTVの把握をします。
LTVを元に将来収益を把握しながら、投資判断をしていくことで、事業の成長スピードは早めていけます。
マーケターにとってとても大切な考え方なので、きちんと理解しておいてください。