今、多くのマーケターが注目しているのが「マーケティングオートメーション(通称:MA)」です。
「マーケティング(売れる仕組み)がオートメーション(自動化)?」
「勝手に商品を売ってくれるってこと?!」と思いたくなると思いますが、そんな魔法のようなツールはありません。
今回は、マーケティングオートメーションの基本機能と導入メリットについてお伝えします。
BtoC企業向け、BtoB企業向けのものがありますが、マーケティングオートメーションの活用が必須になっているBtoB企業向けの内容を中心にお話ししていきます。
目次
マーケティングオートメーションとは
マーケティングオートメーションは主に、集めた見込み客の買いたい気持ちを高めるために使われているツールです。
私たちマーケターの仕事は、認知→興味→理解→検討→購入の顧客化の流れを作ることです。
見込み客との接点で、適切な情報を届けることで、見込み客の意識と行動の変化を生み出します。
例えば
- フォーム入力した情報を自動的にリスト登録する
- メールを開封した人だけ別のリストに入れる
- 特定のwebページを見た人だけリスト化する
- 見込み度の違いを数値化して見込み客の情報に追加する
など。
全てのマーケティング施策を自動化できるのではなく、適切な相手を見定めるための見込み客ごとのデータ管理と、個別の見込み客に対しての適切なアプローチを自動化するシステムです。
マーケティングオートメーション導入の目的
マーケティングオートメーションを導入することで、より適切な相手に、より適切な情報を、より適切なタイミングで、より適切な方法で届けることができます。
それによって、あなたのマーケティングプロセスの反応をより高めて、検討段階の見込み客を増やすことが主な目的として活用されています。
マーケティング業務を全てしなくて良くなるわけではありません。
あなたが作った設計図にしたがって、それに忠実に行動をし続けてくれるだけです。
少し具体的に説明します。
企業向けの商品を販売している場合、一般的にはこのようなプロセスを辿ります。
- 営業リスト集め
- リストアプローチ
- アポイント依頼
- 商談
- 成約
昔なら、営業担当がひたすら電話をかけて、アポイントを設定して、商談に出かけ、セールスを行い、契約をもらうというやり方が一般的でした。
今でもそういうやり方をしている会社はありますが、営業電話お断りな企業も増えていますし、社員1人1人が携帯を持っているのでそもそも固定電話を設置する理由もなくなってきています。
固定電話にかかってくる電話の9割以上が営業電話ですよね。。
営業リソースの最適化が課題
営業が契約を取れるかどうかは、「商談件数」と「商談内容」の掛け算で決まります。
検討する気もない相手や決裁権のない相手との商談は成約する可能性が低く、営業担当としては貴重な営業活動時間を失ったことになります。
すると、商談件数が少なくなり、受注数も少なくなります。
なので、成約率を高めるためには、より見込み度の高い商談だけに営業担当の時間を使う必要があります。
そこで、マーケティングオートメーションが活用されています。
マーケティングオートメーションが管理する情報から、見込み度の高いリストを営業担当に渡すことで、営業リソースの最適化を図れます。
見込み度の低いリストに対しては、見込み度を高めるための情報提供を行い、見込み度が高まった段階で、営業担当へ商談の設定をしてもらうような連携になります。
従来の営業フローでは、営業担当が認知→興味→理解→検討→購入の顧客化プロセスを全て担わなければいけませんでした。
でもマーケティングオートメーションの活用によって、検討→購入のクロージング業務だけを担えば受注できる流れを作れます。
検討までに必要な興味付けや理解納得のプロセスをマーケティングオートメーションが担うことで、限られた営業リソースを最大化することができます。
この成約可能性の高い見込み客を作り出して、営業へ橋渡しするのがマーケティングオートメーションの目的とされています。
究極的にはマーケティングオートメーションがあれば、営業担当も必要ない状態は作れます。
ですが現段階では、既存の組織の生産性をどう高めるかという課題に対して活用されている状況です。
マーケティングオートメーションを導入するメリット
マーケティングオートメーションを導入するメリットには、3つあります。
マーケティングオートメーション導入メリット
- 見込み客リストを細かく管理できる
- 見込み客リストに自動アプローチができる
- 24時間365日動き続けてくれる
それぞれ解説していきます。
1.見込み客リストを細かく管理できる
マーケティングオートメーションには、メールアドレスや企業名や名前などの顧客情報だけではなく、その人があなたのマーケティング施策上でどのような行動をしたのかも、データ化して、リスト情報として持つことができます。
例えば
- 商品紹介ページを閲覧している見込み客
- 申し込みフォームに来て離脱した見込み客
- 新しく公開した資料をダウンロードをした見込み客
- セミナー案内のメールを開封した見込み客
- キャンペーン案内メールの申し込みボタンをクリックした見込み客
など。
見込み客がとったアクションによって、その相手の見込み度がわかります。
どんな情報に反応したのかしなかったのか、どのタイミングのアプローチに反応したのかしなかったのかなどを、個別の顧客データに紐付けて管理ができるようになります。
マーケティングオートメーションを導入することで、1人1人の見込み客を具体的にしていけるメリットがあります。
2.見込み客リストに自動アプローチができる
マーケティングオートメーションは、あなたが作った設計図通りに動いてくれる相棒です。
例えば
- 事例紹介ページを見ていた見込み客には、事例集コンテンツをダウンロードできるメールを送る
- お問い合わせフォームから離脱した見込み客には、「何かお手伝いできることはありませんか?」という内容のメールを送る
- リスト登録された見込み客に、ノウハウを共有する7日間のステップメールを送る
など。
見込み客が顧客になっていない理由は、あなたの商品が本当に自分にとって役に立つ商品なのかが分からないからです。
さらに言えば、あなたの商品が提供している価値が、自分の支払うコスト以上ではないと感じているからです。
なので、見込み客があなたの商品を信じるために十分な情報を提供して、「価値>コスト」の状態まで持っていく必要があります。
相手が必要としている情報や手助けを、タイミングよく届けることができれば、見込み客はあなたを信用して、一歩前進んでくれます。
そのために、1人1人の状態に合わせたアプローチを自動でできるマーケティングオートメーションが役に立ちます。
3.24時間365日動き続けてくれる
マーケティングオートメーション最大のメリットが、休みなく動き続けてくれることです。
指示通りに、疲れることなく、文句も言わず、働き続けてくれます。面倒なメンタルケアなども必要ありません。
100個の指示があれば、常に100個の指示通りに動ける状態です。
リストがどれだけ増えようと、どれだけアプローチが複雑でも、関係ありません。
指示した通りに、働き続けてくれます。
人間ができない量のアクションを、間違いのない精度で行えることが、マーケティングオートメーションのメリットです。
逆に、設計図や指示書が悪ければ、期待したような結果は出せないということです。
マーケティングオートメーションの基本機能
マーケティングオートメーションには4つの基本機能があります。
マーケティングオートメーション(MA)の基本機能
- 見込み客を集めること(リードジェネレーション)
- 見込み客を育てること(リードナーチャリング)
- 見込み客を分けること(リードクオリフィケーション)
- リストを管理すること(リードマネジメント)
マーケティング用語で見込み客のことを「リード」と呼びます。
用語は積極的に覚えなくても良いですが、BtoB企業のマーケティングにおいてよく登場する言葉なので、リードは覚えておいてください。
それぞれ解説していきます。
MAの基本機能① 見込み客を集めること(リードジェネレーション)
マーケティングオートメーションは、見込み客のリストがなければ始まりません。
なので、基本的にはメールアドレスを取得することが出発点になります。
この見込み客を集めることを「リードジェネレーション(見込み客の創出)」と言います。
あなたの商品に興味を持っている人、あなたの商品で解決できる課題を抱えている人を、あなたの見込み客にすることです。
BtoBのマーケティングにおいて、見込み客の集め方はある程度決まっています。
例えば
- 展示会で名刺を集める
- セミナーへの参加者を集める
- 資料請求や問合せを集める
などです。
展示会はBtoB企業のリード集めの場としては鉄板でしたが、人の密集を避けるようになってからは使いづらい手法となっています。
オンラインでの開催も増えていますが、その場で直接名刺を手に入れられたり、商談できたりするハードルは高くなっているので、リード獲得を展示会一本に絞っていたような企業はしんどいと思います。
セミナーを開催して、あなたの商品に興味のある人を集めるのも効果的です。
セミナーのテーマに興味がなければ参加してくれないので、あなたが解決する課題についてのテーマにすることで、見込み度の高いリードを集めることができます。
私たちマーケターが最も活用すべきなのが、webで完結する資料請求や問合せを集める方法です。
web導線でリード獲得するための方法web広告
- web広告
- SEO対策
- SNS運用
web広告やSNSとマーケティングオートメーションツールを連携することで、広告やSNSで取得した情報を活用できるデータの形で保有することができるものもありますが、よく利用されているのはSEO対策されたサイトコンテンツ上のデータ利用です。
サイト内の行動データを利用して、特定のページを見たときにプッシュ通知をしたり、web接客ツールを起動したりして、資料請求などの登録フォームへと導くことができます。
web導線でリード獲得できる仕組みを作れていれば、マーケティングの力を最大限に生かすことができます。
リード獲得を自動化する方法については、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
MAの基本機能② 見込み客を育てること(リードナーチャリング)
あなたのリストに加わった見込み客は、まだ様子見の段階です。
この段階の人にいきなりセールスをかけても期待するような反応は示してくれません。
なので、見込み客の興味を引き出して、理解を促進する必要があります。
この意識の変化を「リードナーチャリング(見込み客の育成)」と言います。
育成と言うと「なんだ上から目線に!」と感じるかもしれませんが、気になる場合は「買いたい気持ちづくり」とでも言い換えてください。
リスト獲得した見込み客に対しては、メール配信で直接アプローチができます。
仕事のやりとりはチャットでやっていても、メールの確認はするという人は多いと思います。
なので、BtoBにおいてはまだまだメールが活用できます。
リードナーチャリングの方法
- 特定のイベントに参加した人だけに、特別なメールを配信する
- ダウンロードした資料に関連する追加情報をメール配信する
- 事例紹介のページを閲覧したリードに対して、事例紹介ブックのダウンロードURLをメール配信する
など。
見込み客の行動に合わせて、相手が求めるだろうコンテンツをメールで届けることで、コンテンツやあなたへの信用を積み上げることができます。
コンテンツとは「役に立つ情報の中身のこと」です。
つまり、見込み客の役に立つ行動を取り続けていれば、商品への理解納得が進み、検討段階へと入ってくれます。
検討段階になった見込み客を営業に渡すことが、BtoB企業が行うマーケティングオートメーション活用の目的でした。
リードナーチャリングできるかどうかが、マーケティングオートメーションで結果を出せるかどうかの鍵になります。
MAの基本機能③ 見込み客を分けること(リードクオリフィケーション)
マーケティングオートメーションには、リストを細かく管理できるという特徴があります。
リードを1つのリストに入れていては、いろんな見込み客がごっちゃになってしまいます。
経営者もいれば担当者もいて、大企業の社員もいれば個人事業主もいて、自社のために活用したい人もいれば、クライアントのために活用したい人もいます。
それぞれあなたの商品に興味を持った人たちということに変わりまはありませんが、課題や裁量、使い道、期待する効果など、商品を買うための条件がバラバラです。
より適切なコンテンツを届けるために、いろんな分け方でリストを管理することが大切になります。
例えば
- 役割(経営者/事業責任者/担当者)
- 決裁権(あり/なし)
- 検討段階(情報収集/製品比較/導入条件)
- リード獲得経路(広告/イベント/セミナー/営業活動)
など。
1つのリードが複数のリストにいることもよくあります。
リストを分けて管理することで、より見込み客が求めているコンテンツ、買いたい気持ちを高めるためのコンテンツを作り届けることができます。
MAの基本機能④ リストを管理すること(リードマネジメント)
マーケティングオートメーションをどこまで広げて利用するかによってやることは変わりますが、主に営業担当が案件の進捗を管理するために使用するSFA(Sales Force Automation)や、顧客の商品購入状況や対応状況などを管理するCRM(Customer Relationship Management)などと連携することによって、より多くのデータを元にしたリード管理ができるようになります。
これはマーケティングオートメーション運用の完成形に近い形なので、多くの企業はそこまで考えなくても良いとは思いますが、見込み客や顧客の状態をリアルタイムに把握して、リアルタイムにアプローチするためには、全ての企業が目指すべき完成形だと言えます。
マーケティングオートメーション導入に失敗する企業の特徴
大なり小なり、マーケティングオートメーションを導入している企業は増えています。
無料で始められるようなものから、月数十万円以上かかるものまでいろんなマーケティングオートメーションツールが登場しています。
ですが、多くの導入企業が失敗しています。
期待しているようなリスト管理や集客の自動化ができず、「月額費用の高いメール配信ツール」のような状態になってしまっています。
最近のメール配信ツールは、月数千円でステップメールやリストの自動振り分け、フォーム作成、LP作成までできてしまいます。
そんな状況で、マーケティングオートメーションツールに月5万円以上払って、週1回のメルマガを配信しているだけだったりします。
マーケティングオートメーションツールを活用できない理由
それは、マーケティングオートメーションを魔法の杖のように思って導入してしまっているからです。
「マーケティングオートメーションで集客を自動化すれば、今よりも楽に売上を増やせる!」と考えて導入する企業の多くが、そもそもマーケティングについてわかっていなかったり、何を自動化するために活用するツールなのかわからずに導入してしまっているのが原因です。
営業担当が顧客対応をしている組織においては、マーケティングオートメーションは見込み客の買いたい気持ち作りを自動化するために活用します。
そもそもどんな見込み客にどんなコンテンツを届ければ、買いたい気持ちを高められるのかがわかっていなければ、マーケティングオートメーションを導入しても、何を実行させれば良いのか分かりません。
自動化する仕組み自体がないのに、何を自動化できるのでしょうか?
人力ではリソースが不足してできないレベルの見込み客へのアプローチやリスト管理を、より的確に自動的にやるための仕組みが「マーケティングオートメーション」です。
多くの企業がコンテンツを作れないために、マーケティングオートメーションツールを不定期のメルマガ配信ツールにしてしまっています。
そうならないために、マーケティングオートメーションツールを導入する前に、自動化する仕組みをまず構築するようにしてください。
マーケティングオートメーションとは|基本機能と導入メリット まとめ
マーケティングオートメーションとは、適切な相手に、適切な情報を、適切なタイミングで、自動的に届ける仕組みです。
BtoB企業においてはマストな仕組みになってきています。
マーケティングオートメーションを導入している多くの企業にとって、その目的は営業担当への検討意向度の高い見込み客の橋渡しです。
認知→興味→理解→検討→購入の顧客化プロセスにおいて、検討段階まで見込み客を連れて行く役割を担います。
マーケティングオートメーションには、4つの機能があります。
マーケティングオートメーション(MA)の基本機能
- 見込み客を集めること(リードジェネレーション)
- 見込み客を育てること(リードナーチャリング)
- 見込み客を分けること(リードクオリフィケーション)
- リストを管理すること(リードマネジメント)
サイト内の訪問者の動きを元にweb接客を行って、メールアドレスを取得するためのページに誘導することで、リストへの登録を促すことができます。
web登録以外にも、イベントやセミナーなどを利用して集めた見込み客のリスト(リード)に対して、相手の必要としているコンテンツを届けることで、見込み客の買いたい気持ちを高めていきます。
見込み客はリストに登録された段階では、様子見です。
なので、相手の役に立つ情報を届けて、相手からの信用を得ることで、商品に対しての理解を深めて検討段階へと導きます。
見込み客のとったアクションに応じてリストを分けることもできるので、特定のメールを開封したリスト、特定のページを閲覧したリストなどに対して、相手の興味関心にマッチしたコンテンツを届けることができます。
その結果、見込み客の中での、あなたの商品に対する知識が積み上がり、商品に対する必要性も高まっていきます。
何より、自分にとって役に立つ情報を無料でくれる相手に対して、好意を抱かない人はいません。
これがマーケティングオートメーションの最大の力です。
マーケティングオートメーションをなんでも自動でやってくれる魔法の杖だと考えていると、必ず失敗します。
多くの企業がただのメール配信ツールとしての機能しか使えていません。
マーケティングオートメーションは、あなたの作った設計図と指示書通りに仕事をこなしてくれる相棒です。
何を自動化するのか、どんなコンテンツを届けるのかは、マーケティングの使い手であるあなたの仕事です。
マーケターの成果を何倍にもできる力強い武器であることは間違いありません。
是非、マーケテイングオートメーションの使い手にもなれるように実践してください。