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【マーケターが要約】実践 顧客起点マーケティング

マーケターを育成するマーケターのはむ師匠が、マーケティングに役立つ本を現役マーケターの目線で解説します!

マーケティングの実践で活かせるポイントに絞って解説するので、「本を読む時間がない!」「読んだけどあまりよくわからなかった…」という方は参考にしてください!

今回紹介する本は『たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング』です。

スマートニュース執行役員の西口一希さんが書かれた本で、N1分析という考え方をもとに、マーケティングアイデアの作り方が解説されています。

重要なポイントに絞って、わかりやすく解釈を交えてお伝えします!

 

結論:1人の顧客を深ぼることで他社を圧倒するアイデアにたどり着く

たった1人の誰かに買ってもらえなければ、他の多くの人には買ってもらえない。

これは真理です。

「多くの人」という人は存在しません。1万人の人も1人1人の人の集合体です。

なので、目の前のその人がなぜあなたの商品を買ってくれるのか、買わないのかを知ることがとても重要になります。

規模を求めるとき、どうしても対象となるターゲットを広く求めがちです。

ですが、多くの人の話を集約すると、平均的なものになって面白味のないものになってしまいます

例えば

あなたがシュークリームを売っているとします。

常連さんがシュークリームを買い続けてくれている理由が、あなたのシュークリームを買って帰った時だけ、反抗期の息子が喜んでくれるからだったとします。

その他の多くの人は「駅前にあって買いやすいから」「クリームが美味しいから」というありきたりな理由だったとします。

多くの人から集めたリサーチ結果を集約すると、「駅近」「クリームの美味しさ」を求めている人が多いから、それを売りにしよう!という話になりがちです。

そこで、「駅近の美味しいクリームが入ったシュークリーム」ということをアイデアとして、シュークリームの写真を見せたチラシを撒いたとしても、それって普通ですよね?

そもそもそこにシュークリームを売ってるお店があることを知っていて、まだ買ったことがない人には特に興味を示す内容ではありません。

駅近なのも知ってるし、シュークリームなんてだいたい同じだろうと思ってるからです。

もちろんこの訴求自体が弱いわけではありません。やり方として間違っているわけでもありません。

ただ、普通というだけです。

でも、「反抗期の息子が喜んでくれるんです」というメッセージと嬉しそうな中年女性の写真を載せたチラシを撒いたらどうでしょうか?

反抗期の息子や娘とどうコミュニケーションをとって良いか悩んでいる親は多いと思います。

同じ悩みを抱えている人がそのチラシを見たら反応しますよね。

別にシュークリームが好きじゃなかったとしても、このアイデアをきっかけにシュークリームを買って帰るという今までとっていなかったアクションをとってくれるかもしれません。

これがマーケティングの力です。

この本では独自のアイデアを見つけるために「N1分析」というものを推奨しています。

N=1とは、リサーチのサンプル数が1ということです。

つまり、1人の人をとことんリサーチすることが、より多くの人に届くアイデアを見つけるために必要なアクションだとしています。

1人の人が体験した商品購入のきっかけや、体験している商品購入の理由が、他の人の購入のきっかけや購入の理由になるという考え方です。

 

『実践 顧客起点マーケティング』ってどんな本なの?

スマートニュース以外にも、P&G、ロート製薬、ロクシタンと名だたる企業でマーケターとして実績を残されている、著者のアイデアの作り方について公開されている本です。

「顧客ピラミッド」「9セグマップ」「N1分析」という3つの考え方をもとに、マーケティングのアイデアを見つける方法について紹介されています。

この考え方を使うことで、マーケティングの全体像を把握して、ゴールへ向かうために何をすべきかがわかるようになります。

紹介されている「N1分析」の考え方を、スマートニュースのケースを使って紹介されていたり、他にも著者の経験してきた具体的な事例を用いて説明されているので、マーケターとしての経験が浅い人でも理解しやすい構成になっています。

 

『実践 顧客起点マーケティング』の中で最も大切な話

本書の中で最も大切な話が、「1000人より1人の顧客を知ればいい」ということです。

「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」というフレームワークが取り上げられがちですが、1人の人の中に存在するマーケティングのアイデアを見つけるということが、最も大切な話だと読み取りました。

紹介されているフレームワークは、マーケティングアイデアを見つけるためのツールに過ぎません。

すでに買ってくれている顧客1人にその理由を聞き、本人も気づけていない欲求の在り処、評価のポイントを知ることによって、他の人をも引きつけるアイデアが見つかるということが、本書の提供してくれている価値です。

ポイントだと思った内容を3つご紹介します。

 

『実践 顧客起点マーケティング』のポイント①

1つ目のポイントは「アイデアの定義」についてです。

本書では、アイデアとは独自性と便益を持ったものだと定義されています。

独自性とは他とは違うということで、便益とは顧客が手に入れる価値です。メリットやベネフィットと言われるものですね。

さらにアイデアは、プロダクト自体が持つアイデアと、コミュニケーションが持つアイデアとに分かれます。

これを「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」と呼んでいます。

それぞれ解説していきます。

プロダクトアイデアとは

プロダクト自体が持つアイデアとは、商品そのものが持つ独自性のある便益ということです。

例えば

独自配合の保湿成分によって肌が潤う化粧水などは、独自性が便益に繋がっている商品だと言えます。

他のどの化粧水とも同じ保湿成分を配合した化粧水だと、独自性がなく便益もさほどあるようには感じられませんよね。

iPhoneやスマートニュースはプロダクトアイデアのある商品だと紹介されています。

登場した時、これらのプロダクトはそれまでになかったものですよね。

つまり、独自性があり、便益のある商品だと言えます。

ですが、アイデア自体はそのうち真似され、一般化され、独自性がなくなり、便益も特別なものではなくなっていきます

なので、プロダクトアイデアをアップデートしていくことが大切になります。

コミュニケーションアイデアとは

これはプロダクトアイデアをターゲットに伝えるためのアイデアです。

コミュニケーションにも独自性と便益が大切です。

コミュニケーションにおける独自性とは、注目されるキャンペーンや広告表現などのクリエイティブの独自性を指します。

どこかで見たことのあるクリエイティブでは注目されないので、これまでに見たことのないクリエイティブを作ることが大切になります。

コミュニケーションにおける便益とは、広告に接触すること自体が楽しい、面白い、心地よいといったプラスの要素をもたらすことを指します。

人が注目し、プラスに感じるようなコミュニケーションアイデアがあれば、マーケティングが成功へと近づきます。

プロダクトアイデアとコミュニケーションアイデアの注意点

マーケティングを成功させるためには、「プロダクトアイデア」と「コミュニケーションアイデア」のどちらも必要です。

片方だけでも売れることはありますが、それでは長く売れ続ける商品にはなりません。

プロダクトアイデアが良いものでも、それを届けるためのコミュニケーションアイデアがなければ、誰にも気づいてもらえず、興味も持ってもらえないからです。

また、コミュニケーションアイデアだけでもうまくいきません。

話題になる広告ってありますよね。

SNSで話題になったり、TVで取り上げられたり、広告賞などを受賞したり、でもその商品が売れているわけではない場合があります。

これはプロダクトアイデアがないため、その商品のことを知っていても手に入れたいと思わない商品ということです。

広告代理店などは、コミュニケーションアイデアを考えて実行する役割なので、話題になるキャンペーンや広告表現を作ってくれますが、いくら話題になってもそれ自体がプロダクトアイデアに繋がるものでなければ、何の意味もありません。

ここはマーケター自身がきちんと理解しておかなければいけないポイントです。

広告代理店に任せていると、彼らの実績になるような話題性のあるキャンペーンや広告を提案されてしまいます。

 

『実践 顧客起点マーケティング』のポイント②

2つ目のポイントは「顧客ピラミッド」です。

これは、顧客の状態を5つの段階に分類したピラミッド型の表です。

顧客ピラミッド

  1. ロイヤル顧客
  2. 一般顧客
  3. 離反顧客
  4. 認知・未購買顧客
  5. 未認知顧客

言い換えると

  1. よく買ってくれる顧客
  2. たまに買ってくれる顧客
  3. 買ってくれたことがある顧客
  4. 買ってくれたことはないけど、知ってくれている顧客
  5. 買ってくれたこともなく、そもそも知られていない顧客

という感じです。

最終的にロイヤル顧客を増やすために、認知・未購買顧客と未認知顧客を一般顧客化したり、離反顧客を減らすためにマーケティングを行います。

自社の顧客がどの分類にどれだけいるのかを知ることで、今とるべき打ち手を決められます

「顧客ピラミッド」はロイヤル顧客を増やすというゴールのために、どこに課題があるのかを掴むための全体像になります。

 

『実践 顧客起点マーケティング』のポイント③

3つ目のポイントは「9セグマップ」です。

9セグマップとは、未認知顧客以外の顧客を「次もそのブランドを選ぶかどうか」という基準で2つに分けて、9つのセグメント(区分)にしたものです。

この9セグマップの利点は、販売促進とブランディングのためのプロモーションとの成果を見れるようにできるところにあります。

未認知の人に、認知してもらって、購入まで連れていくのが販売促進のためのプロモーションです。

企業やブランドが持たせたいイメージ作りを目的にやるのが、ブランディングのためのプロモーションです。

通常これらは企業内で対立する関係にあります。

売上に繋がらない広告を出すことに不満を抱えている営業担当と、ブランド認知によって商品が売れるようになると信じている宣伝担当のような感じです。

そして、イメージ広告のほとんどは正しく評価されておらず、やった感やなんとなく認知度が上がったという調査結果だけで良し悪しを判断されてしまっています。

多くのマーケターがこの課題をどう解決すれば良いか悩んでいましたが、この9セグマップを使うことで、販売促進のためのプロモーションとブランディングのためのプロモーションの効果を評価できるようになります。

本書では「ブランド選好」と呼んでいますが、次に同じブランドを買うかどうかという判断基準をもとに、ブランディングのためのプロモーションが効果的に作用したのかどうかを判断することができます

次に同じブランドを買うという人が増えれば、一般顧客は増え、ロイヤル顧客も増えていくことになります。

 

【マーケターが要約】実践 顧客起点マーケティング 感想

マーケティングとはリサーチのことだと思われているくらい、マーケティングにおいてリサーチは重要な施策です。

ですが、多くの企業が正しくリサーチできていません。

大量のアンケートモニターにリサーチしても、上っ面のぺらぺらの回答しか集まりません。

それらを集計して分析しても、「そうだよね、知ってた。」という結果しか出ないことが多いです。

1人の顧客にフォーカスせよ、という本書のテーマは全てのマーケターが常に頭の中心に置いておくべき考え方です。

すでにあなたの商品を買ってくれた人がいるなら、なぜ買ったのか、なぜ使ってくれているのか、そこにあなたの商品を買う理由があります。

自分の想像でターゲットを作るのではなく、実在したターゲットから実際のところを聞くことで、答え合わせができます。

「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」というフレームワークも紹介されていますが、それよりも「N1分析」という誰でもすぐにできるリサーチ法がこの本で持ち帰っていただきたい重要な内容だと思います。

「顧客ピラミッド」や「9セグマップ」はある程度の規模感でビジネスをしている企業でなければ活用しづらい考え方だと思います。

これからビジネスを始める人やまだまだ成長段階にある企業の場合は、分析を仕様にも材料となるデータが少ない場合があるからです。

なので、どんな段階の企業のマーケターでも活用できる「N1分析」という考え方を覚えておいていただければと思います。

リサーチの内容や、他にも知っておいた方が良い考え方や具体例が紹介されているので、是非興味を持たれた方はGETしてみてください⬇︎

  • この記事を書いた人
はむ師匠

はむ師匠

マーケティングの力でハッピーになれる人を増やすために、マーケティングの知識を発信しているマーケティン熊。 「マーケティングを使える人が増えれば、今よりも世の中は良くなる!」と信じて、大企業からスタートアップ企業まで、今まで100社以上のマーケターにマーケティングの使い方を指導してきている。

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