マーケターを育成するマーケターのはむ師匠が、マーケティングに役立つ本を現役マーケターの目線で解説します!
マーケティングの実践で活かせるポイントに絞って解説するので、「本を読む時間がない!」「読んだけどあまりよくわからなかった…」という方は参考にしてください!
今回紹介する本は『言葉にできるは武器になる。』です。
電通のコピーライター梅田悟司さんが書かれた言葉と思考の強化書です。
クリエイティブ力を鍛えるために役に立つ内容かと思いきや、紹介されている思考プロセスを使うことでリサーチ力、設計力が鍛えられるので、全マーケターの必読書と言えます!
重要なポイントに絞って、わかりやすく解釈を交えてお伝えします!
めっちゃおすすめです!
目次
結論:言葉は思考の上澄にしかすぎない
言葉とは単なるコミュニケーションツールではなく、自分の意見を育てるために使えるツールです。
外に伝える言葉になる前に、心の中で考えるために言葉が使われています。
誰もが「そうか」「確かに」「どういうこと?」などと、心の中で内なる声と向き合っていると思います。
言葉で疑問を持ち、言葉で考え、言葉で納得できる考えを導き出そうとしています。
発言や文章といった「外に向かう言葉」を磨いていくためには、自分の考えを広げたり奥行きを持たせたりさせるための「内なる言葉」の存在を意識することが不可欠です。
『言葉にできるは武器になる。』ってどんな本なの?
本書は電通のコピーライターの梅田さんが、言葉を武器にする方法について書かれた本です。
梅田さんは、数々の広告賞を受賞されているようなトップコピーライターの方です。
よく周りから聞かれる「どうやって伝わる言葉を生み出してるのか?」という疑問を投げかけられていました。それに対しての答えとなる本として書かれています。
単なるコミュニケーションとしての言葉の使い方の話ではないのが本書の特徴です。
大事なのは伝える言葉を生み出す「内なる言葉」だという考えのもと、コピーライターとして伝わる言葉を作り続けてきた著者の思考プロセスを紐解き、それを手に入れることができる内容になっています。
『言葉にできるは武器になる。』の中で最も大切な話
本書で最も大切な話は、言葉には人に伝える「外向きの言葉」と、思考する時に使う「内なる言葉」と2つの言葉が存在するということです。
伝わらないのは伝え方が悪いのではなく、伝える言葉自体が磨かれていないことが問題だとしています。
伝えるスキルを学ぶ機会はたくさんあります。あなたもコミュニケーションスキルに関する本を読んだことがあるかもしれません。
ですが、そういったスキルを身に着ける系のインプットは実戦で活かせることが少なかったりします。
その理由は
- 方法論は理解できるものの、自分の抱えている課題における使い方まで細かく紹介されているわけではないので実行できない
- 型として捉えてしまうため、型に縛られ過ぎてしまうことで動きづらくなる
- 紹介者自身の経験に基づくものなので、同じ経験をしていない、同じ状況に置かれているわけではない自分では本当の意味で理解することはできない
などがあります。
マーケティングも同じで、本を読んだりセミナーに参加しても、そこで紹介されていたことを実行に移せていないものって多くありませんか?
方法論は人の数だけ存在します。
そこから自分にマッチするものに出会える確率はかなり少ないです。
なので、本質や原理原則に向き合うことで、シンプルな結論を探すようにしてください。
著者は「言葉が意見を伝える道具ならば、まず、意見を育てる必要がある」という結論に至りました。
そして、多くの人が気にしている「外に向かう言葉」ではなく、相手が聞きたい意見に着目することで、伝わる言葉を次々に生み出せるようになり、「考えているのではない。頭の中で内なる言葉を発しているのだ。」という本質にたどり着きました。
『言葉にできるは武器になる。』のポイント
「内なる言葉」を磨き、言葉を武器にするためにやるべきことがあります。
言葉を武器にするためにやるべきこと
- 思考を漠然としたものではなく、内なる言葉として捉える
- 内なる言葉を、俯瞰した目線で観察する
- 考えを進めることに集中し、内なる言葉の解像度を上げる
そして、言葉を武器にするための具体的な思考プロセスがあるので紹介します。
言葉を武器にするための思考プロセス①
1つ目、頭にあることを書き出す。
頭の中の考えを書き出すことで、どれだけ自分が考えられているかを把握できるようになります。
頭で考えていると、いろいろ考えていたはずなのに、何も決まっていないとか、考えただけで満足してしまうことありますよね。
考えているけど考えられない人にはこんな特徴があります。
- 頭がいっぱいになった=よく考えたという誤解
- 最初に考えたことが忘れ去られる
- まとまりなく考え散らかしていることに気付いていない
頭に浮かぶ「内なる言葉」を書き出すだけで、これらの考えられない人の特徴から逃れられます。
具体的な方法は、A4の紙1枚に「内なる言葉」を1つずつどんどん書くだけです。
後から整理しやすくするために、余白は気にせず、1枚に1つ、言葉を頭の中から外に出していきます。
スペースがない、紙を無駄にしたくないという方は、付箋に書き出してノートで整理するという方法もおすすめ。
言葉を武器にするための思考プロセス②
2つ目、T字型思考法で考えを進める。
書き出した1つ1つの言葉に対して、「なぜ?」「それで?」「本当に?」と質問を投げかけて深ぼっていきます。
もちろんこれも書き出していきます。
この3つの言葉には役割があります。
- なぜ?→考えを掘り下げる
- それで?→考えを進める
- 本当に?→考えを戻す
内なる言葉を中心に、「それで?」「本当に?」の質問によって前後に広がり、「なぜ?」の質問によって考えが深まっていくので、T字型思考法と呼んでいます。
言葉を武器にするための思考プロセス③
3つ目は、同じ仲間を分類する。
思考を整理しやすくするために、出てきた言葉を「方向性」と「深さ」で分類します。
方向性というのは、切り口だと考えてください。
例えば
- 時間軸(過去/現在/未来)
- 人称軸(自分/相手)
- 事実軸(本当/思い込み)
- 願望軸(やりたいこと/やるべきこと)
- 感情軸(希望/不安)
深さは「なぜ?」の深掘り具合で分けていきます。最終的にたどり着いた本心とそこに至るまでにでた考えを順に並べていきます。
そして、それぞれのグループにネーミングをつけて把握します。
言葉を武器にするための思考プロセス④
4つ目、足りない箇所に気づき、埋める。
このプロセスが言葉を武器にするための肝となります。
グルーピングによって考えの偏りが見えてきます。方向性が少ないとか、考えが浅いとか。
このプロセスでやるべきは、方向性を増やすことです。つまり、横軸を伸ばすことです。
なぜなら、深掘りを先にすると最終的なアウトプットが狭くなるからです。
切り口としての見落としを見つけるためのプロセスだと考えてください。
例えばこんな風にチェックします
- 自分の立場に偏った考え方になっていないか
- 過去の物事だけに偏った考え方になっていないか
- 事実ではなく主張に偏っていないか
など。
具体的にやることは2つ目のプロセスと同じです。
「それで?」「本当に?」と質問を投げかけて、横の広がりを作っていきます。
見落としていた切り口がないかを調べてください。
その後、広げられた考え方に対して「なぜ?」と深ぼっていくことで、書き出された言葉のマップが大きく育っていきます。
モレなくダブりなく、ロジカルシンキングの基本ともいえる「MECE(ミーシー)」な状態へと近づいていきます。
ロジカルシンキングについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
言葉を武器にするための思考プロセス⑤
5つ目、時間を置いて、寝かせる。
ここまで頭を使い倒していると、脳は披露します。
ここまでの考え方の延長で物事を捉えるようにもなっています。
なので、一度この場を離れます。全く別のことをして、脳をリセットさせます。
すると、広がっている思考のマップを客観的に捉えることができ、気づけていなかった抜けモレに気づけるようになります。
言葉を武器にするための思考プロセス⑥
6つ目、真逆を考える。
ここまで考えてきたことは、自分の中にある先入観によって作られています。
なので、一度真逆にしてみて、自分が思いも寄らない、考えようともしない考え方をしてみます。
自分の常識はそれまでの経験の範囲内で作られたものなので、他の人の常識とは異なります。
なので、自分の中にはない発想を見つけるために真逆の考えをあえてしてみます。
真逆の3つのパターン
- 否定→●●ではないもの
- 意味としての真逆(対義語)→ex.本音と建前、希望と不安
- 人称としての真逆→ex.私と相手、1人と大勢、味方と敵
これらの切り口で、思考を広げていけます。
言葉を武器にするための思考プロセス⑦
7つ目、違う人の視点から考える。
ここまでは自分の視点とそれを逆にした視点から言葉を書き出してきました。
それらをさらに飛躍させるために、この7つ目のプロセスが重要になります。
これは具体的な誰かを思い浮かべて、「あの人ならどう考えるか?」という発想をする方法です。
例えば
- プレゼンをするなら相手はどう考えるか
- 一緒に仕事をする上司ならどう考えるか
- 憧れのあの人ならどう考えるか
など。
自分が言葉を伝えようとしている相手の立場に立てば、より相手に伝わる言葉を考えられるようになります。
ですが、完璧に相手に憑依することはできません。あくまで自分の壁を超えた発想をするためのアプローチだと考えてください。
【マーケターが要約】言葉にできるは武器になる。 まとめ
伝わる言葉にするためには、2種類の言葉の存在について知る必要があります。
人に伝えるための「外に向けた言葉」と思考するための「内なる言葉」です。
「内なる言葉」が磨かれていなければ、どれだけ言葉巧みな伝え方をしても伝わらないものになります。
内なる言葉を使いこなすことができれば、あなたの言葉は武器になります。
そのための具体的な7つのプロセスがあります。
- 頭にあることを書き出す
- T字型思考法で考えを進める
- 同じ仲間を分類する
- 足りない箇所に気づき、埋める
- 時間を置いて、寝かせる
- 真逆を考える
- 違う人の視点から考える
頭の中の言葉を書き出し、広げ、別の人の視点でさらに広げる、これにより言葉の解像度を上げていくことで、言葉が磨かれていきます。
「人を動かす」と「人が動く」ことは同じように感じられますが、全く違うものです。
報酬や恐怖など何かしらの強制力がなければ、人を動かすことはできません。
「人が動く」にはどうすれば良いか、それを考えて実行していくのが私たちマーケターの仕事です。
人が動きたくなるような言葉を生み出し、それを届けることで人は動きます。
紹介した7つのプロセスを使って、人が買う動機づけとなる言葉を見つけてください。
船を造りたいのなら、男どもを森に集めたり、仕事を割り振って名りえしたりする必要はない。代わりに、広大で無限な海の存在を解けばいい。(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)
今回ご紹介した『言葉にできるは武器になる。』はマーケターのあなたに読んでいただきたい一冊なので、是非GETしてみてください⬇︎