マーケティングの勉強をしていると、いろんな用語が出てきますよね。
特に「フレームワーク」と呼ばれる、考え方の枠組みはたくさんあります。
でも、これらを全て覚える必要はありません。
ですが、今回ご紹介する『STP』は覚えておいてください。
実戦でも使えて、かつマーケティングの成功と失敗に大きく影響する考え方だからです。
言葉は知ってるけど、使えていないという人はたくさんいます。
もしあなたが『STP』を初めて聞いた人だったり、聞いたことはあるけど仕事では使っていない人だったら、今回のお話はとても役に立つ内容なので、ぜひ最後まで読んでください。
目次
STPとは
STPとは経営学の父コトラー教授が発表した「効果的に顧客づくりをしていくための考え方」です。
STPには3つの言葉が含まれています。
STP
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
この3つを決めることで、マーケティングに必要な3つの要素の1つ「適切な見込客」が明らかになります。
マーケティングに必要な3つの要素…適切な見込み客、課題を解決する商品(価値)、商品を買うための導線
マーケティングの成功に必要なことは、適切な見込み客を見つけて、その見込客の課題を解決する商品を作り、その商品を届けるプロセスを作ることです。
そのために私たちマーケターが設計するのは「誰に・何を・どのように」です。
まずは誰に売るのかを決めるところから始まります。
誰に売るのかが決まってなければ、何を売ればいいのか、どう届ければいいのかがわからないからです。
でも、すべての人の「欲しい!」に応えることはできません。
世の中の人全てが欲しい商品なんてないですよね。
そこで、市場を細かく切り分けて狙いを絞って、マーケティングしやすくするために『STP』が役に立ちます。
STPのS:セグメンテーションとは
セグメンテーションとは、世の中の人を区分けすることです。
区分けされた塊を「セグメント」と呼びます。
何をもとに区分けするかというと、見込み客の「欲求」です。
欲求…「欲しい!」という気持ちのこと。
つまり、どんな欲求を持った人たちを「見込み客の塊(セグメント)」として設定するかを決めるのが「セグメンテーション」です。
そして、特定した見込み客の塊(セグメント)を、次の4つの切り口でさらに細かく分けていきます。
セグメンテーションの4つの切り口
- 地理的要素
- 人口統計的要素(デモグラフィックス)
- 価値観的要素(サイコグラフィックス)
- 行動的要素
わかりやすく言うと
- どこの場所か
- 外面的にはどんな人か
- 内面的にはどんな人か
- どんな状況か
の4つの見方で切り分けていくということです。
セグメンテーションをすることで、自分たちがどういう人たちに商品を売るのかがハッキリとします。
4つの切り口についてそれぞれ解説します。
地理的要素<どこの場所か>
地理的要素とは、場所を特定するものです。
例えば
- 国
- 地域
- 町
- SNSなんかも最近は含まれるのではないでしょうか
直接的にサービスを提供するビジネスの場合は、顧客を集められる場所がある程度決まっています。
例えば
- 町のパン屋さんなら、その町内がセグメントの要素になります。
- 富裕層向けのビジネスなら、富裕層が住んでいるエリアがセグメントの要素になります
- ビジネスパーソン向けのビジネスなら、オフィス街がセグメントの要素になります
今はインターネットを利用することで、地理的要素にとらわれないビジネスをしやすい環境ができているので、そこまで重要なセグメントの切り口ではなくなっています。
広告は場所で区切ることができるので、どこで広告するかを決めるときに使える情報になります。
人口統計的要素(デモグラフィックス)<外面的にはどんな人か>
誰もが「自分は●●です。」と答えられる分類がデモグラフィックスです。
例えば
- 性別
- 年齢
- 年収
- 職業
- 家族構成
など。
男性が欲しいものと女性が欲しいものに違いはあります。
10代が買えるものと30代が買えるものとにも違いがあります。
職業の違いによっても、必要とするものが違います。
独身の人と子供がいる人では、お金の使い所が違います。
どんなプロフィールの人に商品を販売していくのかを決めるためにこの切り口を使います。
メディアが持っているユーザープロフィールで取得しやすい情報なので、広告媒体を選ぶときに使える切り口になります。
価値観的要素(サイコグラフィックス)<内面的にはどんな人か>
「自分は●●なタイプです。」と答えらえる分類分けがサイコグラフィックスです。
例えば
- 性格
- ライフスタイル
- 考え方
- 好きなもの
- 大事にしていること
など。
安さが大事なのか、高くても質の高さが大事なのか、デザインにこだわるのか、機能が大事なのか、人が持っているものが欲しいのか、人と同じは嫌なのか、人それぞれの価値観によって求めるものが変わるので、どういうタイプの人を見込み客にするのかを決めるために、この切り口を使います。
この情報は、見込み客が興味を持っている情報や検索しているワードなどを知るために活用できます。
行動的要素<どんな状況か>
これは、見込み客の「状況」や「状態」を決める要素です。
例えば
- 機会
- 購入有無
- 利用状況
- 態度
など。
機会とは、その商品が必要になるタイミングを迎えている状況を表します。
例えば
- 就活
- 結婚
- 葬式
- トイレが詰まったなども機会と言えます。
購入有無は、すでにあなたの商品を買ったことがあるのか無いのか、1回だけ買ったことがあるのか、継続的に買っているのかなどの状況を表します。
利用状況は、あなたが売ろうとしている商品を、たまに使うのか頻繁に使うのかなどを表します。
態度は、その商品を使うことに対して熱狂的なのか、肯定的なのか、無関心なのか、敵対的なのかなどを表します。
これら4つの切り口を使って、セグメントにどういう人たちがいるのかを細かく分解することで、あなたがマーケティングしていく見込み客の塊を具体的にしていくことができます。
STPのT:ターゲティングとは
ターゲティングとは、細かく分けたセグメントのどこに絞ってマーケティングしていくかを決めることです。
1つのセグメントにするのか、複数のセグメントにするのかを選べますが、基本的にターゲティングは「1つのセグメントに決めること」だと覚えておいてください。
なぜなら、多くの企業ではいろんなターゲットに向けてマーケティングできるほどリソースが無いからです。
ターゲットとは「的」のことなので、1点集中するセグメントを選び出してください。
おすすめの選び方は、自分たちがよくわかる人たちがいるセグメントを選ぶことです。
身近にいる人を見込み客と設定できるようなセグメントを選ぶことから始めると、顧客を理解しやくなるのでマーケティングがしやすくなります。
自分自身の肌の悩みをもとに化粧品を開発してヒットさせている企業がありますが、これはまさに自分自身がターゲット市場ど真ん中にいる見込み客だったという例ですね。
ターゲティングのポイント
ターゲティングのポイントは、1点集中です。
「絞る=他を捨てる」ということです。
選んだターゲット以外は見ない、気にしない、これが鉄則です。
多くの商品が売れていないのは、見込み客を絞れていないからです。
中途半端に「この年代の人にも、この年代の人にも買ってもらいたい」と思ったり、「こんな機能もあるので、こういう人にもアプローチできるな」みたいな考え方をしがちですが、それは絶対にやめてください。
焦点が絞れていないとふわっとした商品になり、ふわっとしたコミュニケーションになってしまい、誰にも見向きされなくなってしまうからです。
誰に向かって話してるのかわからない街頭演説と同じで、誰にも伝わらなくなります。
見込み客を絞り、絞った相手が欲しいと感じ、買いたいと思って、買いに来るような商品を作り、届けることを目指してください。
なので、ターゲティングした見込み客以外のセグメントは捨てることが大原則になります。
自社に「複数のセグメントをカバーできるだけのリソースは無い」ということを前提に、ターゲティングに取り組んでください。
セグメントの中で、より具体的な見込み客を特定することが「ターゲティング」です。
ターゲットについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
STPのP:ポジショニングとは
ポジショニングとは、設定したターゲット市場の中で、あなたの商品がどういう立ち位置を取るかを決めることです。
立ち位置というのは「●●といえばコレ(あなたの商品)」という状態を作ることです。
似たような商品の中の1つではなく、その中でも特徴的な商品として見られるために、どんな違いを作って、それを届けるのかを決めてください。
例えば
- 特徴的な機能を持たせて、それを訴求するのか
- 特徴的なデザインにして、それを訴求するのか
- 他とは違う価格帯にして、それを訴求するのか
など。
ターゲット顧客の求めているモノやコトに合わせて、自社の商品の1番を何にするのかを考えます。
つまり、「他の商品との違い」を何にするのかを決めることだと言えます。
この「他の商品との違い」が『USP』と呼ばれるもので、「独自の売り」です。
USPという言葉はよく使われていますが、その使われ方はよく間違われます。
言葉の意味として「独自性」という表現をされるために、ただ他社との違いがあればいいと思われがちです。
ですが、『USP』で売りとすべき独自性は、見込み客が求めている独自の価値でなければいけません。
わかりやすく説明すると
「今ある商品では満たせていない課題を解決できる商品であること」が独自の売りであり、顧客にとって意味のある『USP』となります。
例えば
牛丼と言えば安い食べ物というイメージが一般的です。
そこに対して、同じように安い牛丼を作り参入してもうまくはいきません。
なぜなら、安さを提供する牛丼はすでに市場に存在するからです。
今から参入するとしたら、今の市場では満たせていない見込み客の課題を解決できる商品でなければいけません。
1つの案としては「高くてもより美味しい牛丼を食べたい」という人のために、高い牛丼を売るというアプローチになります。
もちろんたくさんの人が求めているものではないので、大量に売れることはないと思います。
でも、高くてもより美味しい牛丼を食べたいと思っている人にとっては、あなたの販売するプレミアム牛丼しか選択肢がない状況を作れます。
選択肢がなければ、あなたの商品が選ばれますよね。
顧客が欲しいと感じて、買いたいと思って、自ら買いに来る状況を作るのがマーケティングでした。
つまり、マーケティングはポジショニングによってその成否が分かれます。
ポジショニングについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
STPとはマーケティングの羅針盤だ まとめ
STPとは、誰に売るのか、どのような商品として売るのかを決めるために使う考え方の枠組みのことです。
STP
- Segmentation(セグメンテーション)
- Targeting(ターゲティング)
- Positioning(ポジショニング)
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングという3つの見方で、市場を決めて、見込み客を決めて、自社の立ち位置を決めます。
全てに対してマーケティングしていくのではなく、「この人には是非この商品を使ってもらいたい!」と思える人を見つけてください。
そのために使える考え方の枠組みが『STP』です。
見込み客がどういう人たちなのかが見えれば、世の中にある商品に対してどんな不満を感じているのかを想像することができます。
そして、その満たせていない課題を解決するための商品を作り、独自の価値を提供していくことで、満足できていない見込み客から求められる商品になります。
そして、マーケティングが成功へと近づきます。
はむ師匠のあとがき
今回紹介した『STP』は、マーケティングのフレームワークと呼ばれるものの1つです。
マーケティングを学ぼうとすると、大量のフレームワークと遭遇します。
覚えるだけで大変だし、マーケティングそのものを理解できていない段階で、フレームワークを覚えようとすると、なぜそれが効果的なのかがわからないまま、ただ知識が増えただけになりがちです。
人によっては、覚えきれずそこで挫折してしまう人もいます。
正直、フレームワークを全て覚える必要はありません。
実戦で使えなければ意味がないからです。
マーケティング本などで紹介されているフレームワークのほとんどが、特定のフレームワークの派生で生まれているものだったりします。
新しい考え方を発信したいと考える人たちが、日々新しいフレームワークを産み出そうともしています。
これらに振り回されて、実行できなくなっていては本末転倒です。
本来、マーケティングはシンプルなものです。
全てを知ろうとするのではなく、自分のビジネスに使えるものだけ覚えれば十分です。
私たちマーケターは、学者になりたいわけではありません。ビジネスを加速させたいはずです。
なので、実戦で使える重要なものだけマーケティング道場で紹介していくので、それだけしっかりと使いこなせるようになってください。