目的を果たすためには、計画が必要です。
計画を立てない企業はいませんが、正しく計画できていない企業はたくさんいます。
マーケティングは、顧客の創造つまり収益に直結する活動です。
マーケティング次第で、売上が上がったり利益が無くなったりします。
なのでマーケターの作る計画で、事業がうまく行くかどうかが決まると言えます。
今回は、マーケターが作る事業計画の作り方についてお話しします。
目次
事業計画とは
計画とは、物事を行うために方法・手順などを筋道を立てて企てることです。
事業計画とは、事業をあるべき状態へと導くための地図です。地図がなければゴールへは行けませんよね。
事業計画の要素
- いつ
- 誰が
- 何を
- どうやって
- どれくらい
- いくらで
これらの要素が抜けていると、「あれどうなってるっけ?」「これってだれがやってるの?」「あっちのやり方の方がいいんじゃない?」というような状況になります。
すると、また計画を考えだしてしまい、なかなか前に進められなくなり、実行できない計画になってしまいます。
そうならないために、結果が出るまではこの通り進めればOK!と言えるような計画を作る必要があります。
目標を定めて、その目標を達成するためのアクションを決める、これが計画づくりです。
マーケターが作る事業計画とは
マーケターが作る事業計画は、よりマーケティング活動に根ざしたものになります。
会社の立てた売上や利益の目標を達成するために、マーケティング活動によって動かせる数字を作り、それを達成するためのアクションを作る、これがマーケターの作る事業計画です。
売上や利益の目標を達成するために、どれだけの顧客を集める必要があるのか、その人たちにいくらで商品を売るのか、どうやって買ってもらうのか、これらを考えて実現させていくための地図を作ります。
マーケターのための事業計画の作り方の手順をお伝えします。
マーケターの作る事業計画の5STEP
- 目標を決める
- 達成のための課題を設定する
- 解決のためのアクションを決める
- アクションをタスクに分解する
- タスクに担当をつける
この手順に沿って作れば、目標を達成するための計画が出来上がります。
事業計画の作り方① 目標を決める
目的と目標は目指すものという意味では同じですが、異なる意味を持っているので使い分けてください。
目的:最終的に成し遂げようとすること、目指す最終到達点
目標:目的を達成するために設ける具体的な手段
目的への道を示すのが目標という感じです。
目標に沿って進めば、目的にたどり着けると考えてください。
事業を始めるときに、その事業の目的があると思います。
「何を成し遂げたいのか」「どういう状態になりたいのか」など。
それを達成するための目標を立てるのが、事業計画を作るときの出発点です。
あなたが起業家で、これから事業を始めるための事業計画を作る場合は、まず目的をはっきりとさせることから始めてください。
目標を決めるために必要な要素
目的を果たすためには、事業が継続しなければいけません。
事業の継続のためには、運営の燃料となる利益が必要です。
なのでマーケターである私たちは、利益の最大化を目指さなければいけません。
利益の増やし方
売上を増やして、費用を抑えることで、利益は最大化されます。
利益=売上ー費用
売上とは
売上は、商品を売ることで手に入るお金のことです。
売上は、商品の購入価格と顧客の人数で決まります。
売上=購入単価×顧客数
売上を増やすためには、商品の購入価格を上げるか、より多くの顧客に買ってもらうかになります。
費用とは
費用は、商品を売るためにかかるお金のことです。
費用には、事業を運営するためにかかる「固定費」と、商品の売れ行きによって変わる「変動費」があります。
費用=固定費+変動費
費用を減らすためには、家賃を下げたり、給与の低い人材を雇ったり、広告費を減らします。
固定費の種類…家賃・人件費・通信費・システム使用料など
変動費の種類…商品原価・手数料・広告費など
ここまでは一般的なビジネスの話ですが、目標を決める時に私たちマーケターが意識しておかなければいけない重要指標が、「LTV」と「CPO」です。
この2つが売上と費用の鍵となる指標なので、それぞれ説明します。
LTVとは
LTVとは、Life Time Valueの略で、「顧客生涯価値」という意味です。
1人の顧客がもたらす売上の総額を表しています。
生涯というと大袈裟に感じると思いますが、任意の期間での売上の総額と考えてください。
ビジネスモデルや商品によってその期間を変えて計算しますが、多くの場合は事業年度に合わせて期間を1年間にすることが多いです。
例えば
1万円の商品が10回買われたとしたら、LTV10万円となります。
LTV10万円の顧客が100人いたら、1000万円の売上になるという考え方です。
1人の顧客あたりの売上総額という考え方が前提になるので、覚えておいてください。
LTVについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
CPOとは
CPOとは、Cost Per Orderの略で、「注文あたり広告費用(顧客獲得あたり広告費用)」の意味です。
1人のお客さんから1つの注文をもらうためにかかった広告費です。
例えば
広告に100万円かけて100人集客できたとしたら、CPOは1万円となります。
広告に100万円かけて1人しか集客できなかったら、CPOは100万円となります。
CPOが高くなればなるほど、集客のための費用は増えていくので、CPOを下げることは利益を出すためには大事です。
ですが、
事業拡大を考えた時にCPOを高く設定する場合もあります。
CPOについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
マーケターが作る事業計画の目標設定3STEP
マーケターの作る事業計画の目標となるのが「顧客数」「LTV」「CPO」です。
売上は「顧客数×平均LTV」で作られ、費用の大部分は「顧客数×CPO」で作られるからです。
この3つの数字をコントロールしながら、利益の出せる事業を作っていくのがマーケターの仕事です。
具体的な手順はこの3STEPです。
目標設定3STEP
- 平均LTVを計算する
- 必要な顧客数を計算する
- CPO目標を計算する
では、それぞれ説明していきます。
1.目標設定のためのLTVの決め方
LTVは売上を表す重要指標です。
売上=平均LTV×顧客数
1人のお客さんが平均いくら買ってくれるのかがわかれば、目標の売上を作るために何人のお客さんを増やせば良いかが計算できます。
なので、まず平均LTVを計算します。
すでに事業をやっていて、ある程度の顧客がいるのであれば計算は簡単です。
売上の総額を顧客の人数で割れば良いだけだからです。
LTV=総売上÷顧客数
すると、1人あたりのLTVが計算できます。
新しく売る商品なら、1年間でどれくらいの回数利用してもらえる商品かを想定して、商品価格に想定の利用回数を掛ければ、平均LTVを計算できます。
例えば
- 月5,000円のジムの1年間の平均利用月数が8ヶ月なら、平均LTVは40,000円
- 1ヶ月分5,000円の美容液の1年間の平均購入回数が4回なら、平均LTVは20,000円
- 平均商品単価5,000円のアパレルショップで1年間の平均購入回数が6回なら、平均LTVは30,000円
という感じです。
2.目標設定のための必要な顧客数の決め方
平均LTVがわかれば、何人の顧客が必要になるかがわかります。
平均LTV×顧客数=売上だからです。
なので、必要な顧客数は目標売上と平均LTVがわかれば計算できます。
目標売上÷平均LTV=必要な顧客数
例えば
目標売上10億円、平均LTV10万円の時、必要な顧客数は1万人となります。
3.目標設定のためのCPOの決め方
CPOは費用の大部分を占める重要指標です。
集客にお金をどれだけ使えるかが、集客の成功と失敗を分けます。
たくさんの人に広告すれば、たくさんの人に知られることになり、見込み客が増えるからです。
例えば
チラシ1枚しか撒けないのと、チラシ1万枚撒けるのD2Cでは、集められるお客さんの数に違いがあるのは明らかですよね。
ですが、湯水の如く広告費を使える企業はほぼいません。
なので、広告費をどれくらい使えば良いのかを決めておく必要があります。
商品を売るためにいくらまでかけても良いのか、つまり1人の顧客を増やすためにどれくらいの広告費をかけられるのかを決めます。
これがCPO目標です。
CPOはかけた広告費を集客できた人数で割ることで計算できます。
CPO=広告費÷顧客数
目標CPOは、必要な利益を残すために、どれくらいの費用を使えるか?という考え方で計算します。
使っても良い広告費の計算式
目標売上-想定費用(固定費+広告費以外の変動費)-目標利益=使っても良い広告費
そして、1人あたりの顧客獲得に使える広告費を計算します。
目標CPOの計算式
使っても良い広告費÷必要な顧客数=1人あたりにかけられる広告費(目標CPO)
目標CPOよりも実際のCPOが高くなると、その分利益を減らすことになります。
事業計画の作り方② 達成のための課題を設定する
ビジネスに関わらず何かを達成するためには、課題を解決する必要があります。
課題とは、目指す状態と現在の状態との間にあるギャップのことです。
「これが無ければ、理想的な状態にはなれない」といったものです。
例えば
- 欲しいと感じてもらえる商品
- 販売するためのwebサイト
- 営業するための人材
などはわかりやすいそもそもな例です。
もう少し具体的にすると、
- たくさんの人に評価されている商品
- 申し込みがスムーズなwebサイト
- ひたすら新規アポイントを取れる体力のある営業人材
などになります。
たくさんの人の評価をもらっている商品があれば、興味を持って買ってみようと思う人が現れて、顧客を増やせます。
顧客を増やすという理想的な状態のための課題が「たくさんの人の評価を手に入れること」になります。
事業計画の作り方③ 解決のためのアクションを決める
課題が見えたら、それを解決するためのアクションを決めます。
例えば
- 商品の評価を集めるために、モニターキャンペーンをする
- 申し込みをスムーズにするために、入力項目を減らす、自動入力機能を実装する
- 営業人材に強い紹介会社に相談する
など。
課題に対する解決策はいろいろあるので、今後目指したい方向や自社のリソースを考えて、最適なアクションを決めます。
例えば
- SNS上での口コミが重要なので、インフルエンサーを対象にモニター依頼をする
- Amazon決済を導入して、住所など個人情報入力の手間を無くしてしまう
- アポイントメールを自動化して、そもそも営業がいなくても良い状況を作る
など。
最適なアクションを選べるかどうかは、私たちマーケターの引き出しの多さに依存します。
なので、常に新しい手法への探究が必要になります。
事業計画に必須の指標KPI
課題の対策として適切なアクションを決められても、うまく行かないことが多いです。
その理由は、成功の基準を設けられていないためです。
そのアクションの結果、何がどう変化すれば成功なのかが決められていないと、やっている意味があるのかどうかが分かりません。
ずっとやってるからと言って、効果があるのかないのか分からない施策を、惰性でやり続けている企業は多いです。
良い計画は数値化されています。そのために利用するのがKPIです。
KPIとはKey Performance Indicatorの略で、目標に対する達成の度合いを測るための指標のことです。
KPIという言葉はよく耳にしますが、どの数字をKPIにすれば良いのかわからないという声もよく聞きます。
例えば
1億円という売上目標があり、この売上を作るために1万円の商品を売るとします。
この時、1万人の顧客がKPIとなります。
売上1億円=1万円の商品×1万人の顧客
ですが、この時にKPIだった1万人の顧客を目標と見た時、KPIは1万人の顧客を集めるために必要なものへと変わります。
例えば
10人に商品を売った時、だいたい1人が買ってくれるとすると、1万人の顧客を集めるためには、10万人に商品を売れば良いことになります。(成約率10%)
1万人の顧客を集めることを目標にすると、KPIは10万人の見込み客と10%の成約率となります。
このように、目標に対して立てたKPIを満たすKPIが存在するところが、KPIの扱い方を難しく感じる理由です。
例えば
インフルエンサーに商品モニターをしてもらう時、何人にしてもらえれば商品への評価集めが十分な状態になるのかを決めて、その数を達成すべくアクションを取ります。
基準となる数字は、インフルエンサー自体の数、全体のフォロワー数やインプレッション数などいろいろありますが、その時々の課題解決に合わせて変わります。
どの数字をKPIとするかが大事ですが、目標達成のために必要になる数字をKPIにすれば良いので、難しく考えないようにしてください。
事業計画の作り方④ アクションをタスクに分解する
目標達成のためのアクションが決まったら、それをタスクに分解します。
あえてアクションとタスクを分けています。
意味合いとしては、どちらも事業の課題解決のために仕事としてやることなので同じです。
でもあえて、大きな行動をアクション、小さな行動をタスクと分けて表現しています。
アクションを分解したものがタスクで、タスクの集まりがアクションだと考えてください。
なぜ、あえてこの2つを使い分けるのかというと、アクションを決めているだけでは実行されないからです。
世の中の多くの計画は実行されないことが問題です。
アクションが決められていても、実行されなければ事業計画は絵に描いた餅です。
アクションが実行されない理由は、具体的な作業として示されていないからです。
例えば
トーストを焼くというアクションを考えてみてみましょう。
トーストを焼くためには、以下の手順が必要になります。
トーストを焼く手順
- 準備をする(トースター/パン/バター/バターナイフ/皿)
- パンにバターを塗る(僕は先に塗る派です)
- トースターにパンを入れる
- タイマーをセットする
- 出来上がったら皿に乗せる
この1~5がタスクです。具体的な作業になっていますよね。
経営者や事業責任者に対して計画を示す時は、タスクまでを書く必要はありません。
ですが、実施するメンバーに対してはタスクが必要になります。なぜならトーストを実際に焼くのは彼らだからです。
思い思いの焼き方をしていては、間違ったことをしてしまったり、時間がかかったりしてしまう可能性があります。
その結果、アクションが実行されなかったり、期待通りの結果が得られなかったりします。
なので、アクションを実行するメンバーに対しては、より具体的なやること(タスク)を示す必要があります。
トーストの焼き方をより厳密にするなら、
- バターの使用量
- バターの塗り方
- トースターに置くパンの位置
- タイマーの時間
なども具体的に指示すると、より間違ったアクションになりにくくなります。
このアクションのためのタスクが具体的になっていれば、仕事の生産性はグンと上がります。
やることが明確なので、誰がやっても同じようにできます。これが仕組みです。
マーケティングは売れる仕組みづくりです。
私たちマーケターは、計画が計画通りに実行される仕組みづくりもしなければいけません。
正しい実行がなければ、期待通りの結果は手に入らないからです。
事業計画の作り方⑤ タスクに担当をつける
最後に、アクションを分解して洗い出したタスクの担い手を決めます。
重要なのは、期限を必ず決めることです。
結果が出せないのは、実行されていないからです。
やることが具体的になっていても、それが完了されなければ結果は出せません。
特に
マーケティングはいろんなことを同時進行でやる仕事です。
他の人と連携しながら進める仕事が多いので、タスクの遅延は全体の遅延へと繋がります。
結果が先延ばしされれば、チャレンジできる回数も少なくなり、成功の可能性が小さくなります。
なので、それぞれのタスクをいつまでに終わらせるのかをきちんと決めるようにしてください。
実行される計画のためのKDIという考え方
KDIとはDo(アクション)の達成度合いを数値化するという考え方です。
例えば
10社訪問すれば1社受注できる確率で営業できる担当者がいるとします。
1社の新規受注を目標を達成するために、10社訪問する必要があります。
この10社が目標達成のためのKPIとなります。
ですが、1社訪問するためには10社へアポイントの依頼をしなければいけないとすると、10社訪問するためには100社にアポイントの依頼をしなければいけません。
この時、来月の新規受注1社のために10社の訪問に繋がるアポイントの依頼を、今月100社にするというアクションが必要になります。
このアクションに対しての数値目標をKDIとしています。
つまり、行動目標を具体的な数字で表すことで、アクションの状況把握がしやすくなるということです。
状況が把握できれば、改善を加えることができます。
数字で具体的に示されるので、行動しないという選択肢を消すことができ、実行される計画になるということです。
あなた1人でマーケティング業務全てを担っているとしても、やることは同じです。
何を、どの順番で、どれくらい、いつまでにやるのかを、自分自身に割り振ってください。
参考
KDIは株式会社ZUU代表取締役社長の冨田和成さんが書かれた「鬼速PDCA」という書籍の中で用いられている用語です。ぜひ参考にしてみてください。
【マーケターの仕事】事業計画の作り方 まとめ
事業計画とは、事業をゴールへと導く地図です。
これらの要素が具体的にされることで、何をすればいいのか、どれくらいやればいいのかが関係者全員に分かるようになります。
事業計画の要素
- いつ
- 誰が
- 何を
- どうやって
- どれくらい
- いくらで
マーケターは、事業の目標である売上や利益を生み出すための計画を作ります。
以下の5つの手順に沿って計画を作ってください。
マーケターの作る事業計画の5STEP
- 目標を決める
- 達成のための課題を設定する
- 解決のためのアクションを決める
- アクションをタスクに分解する
- タスクに担当をつける
計画がうまくいかない理由は
- 正しい目標が設定されていない
- 正しく課題が設定されていない
- 正しいアクションが設定されていない
- タスク分解がされていない
- タスクに担当と期日と定量目標がない
のどれかです。
実行さえできれば、あとはうまくいかないところを直していくだけです。
実行までを計画に落とし込めている計画だけが、ゴールへ導く地図になれます。
1回で完成形にすることはできないので、是非トライ&エラーを繰り返しながら、事業計画を完成させてください。