マーケティングの本番は、施策を実行してからです。
企画業務のように思われがちですが、絵に描いた餅で終わらせないために、計画を実現させることが1番重要な仕事です。
ほとんどの場合、描いた通りの結果にはなりません。
なので、常に課題を見つけて、改善を繰り返す必要があります。
そこでやるのが「ABテスト」です。
成果を手に入れられている企業は必ずABテストをしています。
なので、ABテストに取り組んでいる企業は多いですが、結果を出せている企業は多くありません。
今回は、効果のあるABテストのやり方についてお伝えします。
※web集客を想定した内容になっていますが、店舗集客の場合も考え方は同じなので参考にしていただけます。
目次
ABテストとは
ABテストとは、複数のパターンを同時に試して、高い反応を得られるやり方を見つける方法です。
2パターン以上のやり方を試すこともありますが、基本的にはAパターンとBパターンでテストをすると思っていてください。
テストパターンが多ければ、その分必要となるデータの量も多くなるので、多くの企業にとっては不向きだからです。
ABテストの目的
ABテストの目的は、より売れる売り方を見つけることです。
つまり、CVRを改善することと言えます。
CVR…コンバージョン率。購入・申込などの成果地点への到達率のこと。
プロモーションの反応率を高めることで、今の集客のやり方でもより多くの商品を買ってもらうことができるようになります。
CVRが高くなる影響
見込み客100人、CVR1%の時、売れる商品は1つ。
見込み客100人、CVR5%の時、売れる商品は5つ。
広告にかけているお金は変わらず、CVRが高まったとすると、1人あたりの獲得単価(CPO)は小さくなります。
先程の例で、広告費が1万円かかっていたとするとこうなります。
CVRが高くなる影響
見込み客100人、CVR1%の時、売れる商品は1つ、CPO1万円
見込み客100人、CVR5%の時、売れる商品は5つ、CPO2千円
1人あたりの獲得単価が安くなっているので、より多くの顧客を集めるために積極的に広告できるようになります。
CPOについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
ABテストする対象
では、具体的に何をテストすれば良いのかについてお話しします。
テストする対象には大きく3つあります。
ABテスト対象
- キャンペーン
- ランディングページ
- 広告
広告→ランディングページ→キャンペーン(オファー)という流れで、見込み客は顧客になります。
この見込み客が顧客化される流れを「顧客化プロセス」といいます。
より購買に近い地点のテコ入れをすることが、集客インパクトに繋がります。
なので、キャンペーン(オファー)が最も集客インパクトが大きく、広告の集客インパクトが小さいということです。
顧客化プロセスについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
ABテスト対象① キャンペーン
キャンペーンのABテストでやることは、オファーのパターンテストです。
オファー…取引の条件。割引・特典・保証を使った、売り手からの買い手への提案のこと。
割引いたり、特典をつけることで、お得に感じてもらったり、
返金保証をつけることで、とりあえず試してみようと思ってもらうことで、購入を後押しすることができます。
買い手は、手に入れる価値よりも、支払うコストが高いと感じれば買いません。
なので、どれくらいのオファーであれば、より多くの見込み客が買ってくれるのかを調べるために、キャンペーンのABテストをします。
ABテスト対象② ランディングページ
多くのマーケターにとって、効果的なABテストがランディングページのテストです。
なぜなら、買うかどうかを決める場所がランディングページだからです。
広告で興味を持った見込み客が、ランディングページの内容に納得すれば、購入や申込をしてくれます。
見込み客は、ランディングページで伝えられている内容に響かなければ、何もせずに出て行ってしまいます。
なので、どんな表現やコンテンツがより見込み客の反応を得られるのかを、ABテストで見つけていきます。
ABテスト対象③ 広告
これが最も行われているABテストだと思います。
広告の反応を高めることができれば、より多くの見込み客をランディングページへ連れてくることができて、広告のクリック単価も安くなります。
ABテストとは広告のテストのように思われていることもあるくらい、一般的に行われているテストが広告のABテストです。
ただ、広告を見たから商品を購入したり、申込をしてくれたりするわけではないので、CVRへのインパクトは大きくないテストになります。
もちろん、購入しやすそうな人の反応を得ることができれば、CVRへのインパクトはあるのですが、広告に反応した人は必ずランディングページを見るので、ランディングページの影響をより受けます。
なので、どれだけ効率的に見込み客を集められる広告にするかを目標にします。
ABテストが効果的な理由
ABテストが効果的な理由は、必ず改善ができるからです。
AパターンとBパターンを比較すれば、必ず良い方と悪い方ができます。
結果の良い方を選び続ければ、改善し続けられます。
例えば
ランディングページのABテストをした結果
Aパターン:CVR0.5%
Bパターン:CVR0.7%
となった時、Bパターンを残してCパターンとテストをします。
次に
Bパターン:CVR0.7%
Cパターン:CVR1.0%
となった時、Cパターンを残してDパターンとテストをするという感じです。
もし
Bパターン:CVR0.7%
Cパターン:CVR0.5%
となったら、またBパターンを残してDパターンとテストをするという感じになります。
良い結果を出したパターンよりも、良い結果を出せるパターンを探し続けることになるので、理論上は今よりも悪くなることがありません。
ただ、実際にはいろんな要因で見込み客の反応は変わるので、CVRが一定ということはありません。
常に今よりも良い方を探すというところに、ABテストが効果的な理由があります。
意味のないABテストの特徴
ABテストはやってるけど、そんなに効果が感じられないという企業は意外と多いです。
その原因は、大きく3つです。
意味のないABテストの3つの特徴
- AパターンとBパターンの差が小さい
- とりあえず変えてるだけ
- いろんなテストを同時にやっている
テストするパターンの違いがあまりないと、結果に差が出づらくなります。
例えば
- オーディエンスを33歳と34歳でテストする
- 商品画像を左に置くパターンと右に置くパターンでテストする
- 300円OFFと500円OFFでテストする
など。
手段が目的化してしまうと、とりあえず何か変化を加えようとして、こういう意味のない違いをテストしてしまいがちです。
あと、複数のテストを同時にしてしまうと、どの要素が結果に貢献したのかがわからなくなり、次のテストの検証がしづらくなります。
例えば
ランディングページのABテストをする時、
ファーストビューを、A:商品画像メイン/B:キャンペーン内容メインでテスト。
申込ボタンを、A:緑色/B:赤色でテスト。
コンテンツを、A:商品特徴を多め/B:実績を多めでテスト。
この時、どの要素が効果的にはたらいて結果が出たのかがわかりません。
なので、AパターンBパターンどちらを残せば良いのかを決められなくなります。
高度なツールを使えば、全ての掛け合わせパターンの中で、最もパフォーマンスの高かったものを選ぶということもできますが、ツールの利用料もかかりますし、複数のテストを検証するためのデータ量もかなり必要になります。
テストしている部分以外は何も変えなければ、結果の良し悪しはテストしている部分の良し悪しになります。
そうすれば、すぐに結果がわかりますし、大量のデータを必要としないので、テストのPDCAを早く回すことができます。
効果的なABテストのやり方
ABテストを効果的にやる方法は、より改善インパクトのあるテストからやることです。
ABテストの目的は、CVRを改善することでした。
なので、CVRにより大きな影響を与えるテストから取り組んでください。
具体的には、キャンペーン(オファー)>ランディングページ>広告の順です。
買うかどうかを決める要素からテストするということです。
広告のテストをどれだけやっても、キャンペーンの力が弱ければ買ってもらえません。
ランディングページで興味を惹きつけ、納得を作れていなければ買ってもらえません。
広告を見ただけで「よし、買おう!」と思う人はほぼいません。
なので、「よし、買おう!」「買ってみよう」と思ってもらえる導線を作ってから、その導線に見込み客を集める段階で、広告のABテストが効果を発揮します。
キャンペーン、ランディングページ、広告、それぞれのABテストのやり方をご紹介します。
キャンペーンのABテストのやり方
キャンペーンのABテストは、オファーをテストします。
例えば
5,000円の美容液を1,000円割り引いて売る時と、1,000円相当の保湿パックを特典としてつけて売る時で、どちらの方がより高いCVRになるかをテストするようなイメージです。
他にも
- 割引率を変えたパターンでABテストをする
- 特典の種類を変えたパターンでABテストをする
- 保証の手厚さを変えたパターンでABテストをする
など、キャンペーンオファーの内容だけでも色々とABテストができます。
価格は低ければ低い方が良いと思いがちですが、安すぎると「あまり品質が高くないのでは?」と警戒して、買わない人が増えてくる傾向もあります。
ABテストをした結果、1番安い価格ではなく、2番目に安くしたパターンが最もCVRの高い売り方だったというケースもあります。
売り方を変えることになるので、あまり積極的に行われていないABテストですが、集客改善インパクトは大きいので、是非取り組んでみてください。
オファーについては、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
ランディングページのABテストのやり方
ランディングページのABテストのポイントは、ファーストビューを優先することです。
ファーストビュー…ランディングページが開いて最初に画面に表示されている部分のこと。
見込み客は、ファーストビューを見てそのページを見るかどうかを瞬時に判断しているからです。
「自分にとって役に立つ情報かどうか」「お得な情報があるのかどうか」が瞬間的に伝わらなければ、すぐに出ていくか、サーっと2、3スクロールだけさせて、ページから出て行ってしまいます。
なので、ファーストビューで見込み客の注意を引き、興味を引き出すことが、ランディングページを読んでもらい、商品への納得をしてもらうために重要になります。
ランディングページのテストのやり方には、3つの方法があります。
ランディングページのABテスト方法
- 2つのURLをそれぞれ入稿する方法
- リダイレクトをかけて別のURLを表示する方法
- ページ内コンテンツを出し分ける方法
1.2つのURLをそれぞれ入稿する方法
基本的には、「2つのURLをそれぞれ入稿する方法」で大丈夫です。
これはAパターンのランディングページとBパターンのランディングページをそれぞれ入稿して、同時に動かすやり方です。
URL毎に広告を入稿しないといけないので手間がかかりますが、AパターンとBパターンのテストをするくらいなら、それで十分です。
2.リダイレクトをかけて別のURLを表示する方法
「リダイレクトをかけて別のURLを表示する方法」は、広告に入稿するURLは1つで良いので手間がありません。
そのURLにアクセスしたら、自動で別のURLに飛ばされるという仕組みなので、Aパターンのランディングページを入稿していたとしても、人によってはBパターンのランディングページが表示されるということです。
ただ、リダイレクトを推奨していない広告媒体もあったり、リダイレクトするときに表示の遅延があったりとデメリットもあります。運用の手間を省きたいという人はやってみてください。
3.ページ内コンテンツを出し分ける方法
流入経路別に表示させるコンテンツを変える方法です。
同じページに来た別のターゲットに対して、ターゲットにマッチするコンテンツを見せるように、自動でコンテンツの入れ替えができるツールを使うやり方になります。
例えば
東京都でアクセスした人に、東京都の店舗情報を最初に見せるようにしたりできます。
ランディングページで活用する場合は、ターゲットに合わせたファーストビューに切り替えるなどのやり方があります。
この方法も広告に入稿するURLは1つで良いので運用は楽ですが、テストの設計や設定が複雑になるので、より上級者向けだと思ってください。
そもそも売れるランディングページに必要な要素がないと、どれだけテストしてもCVRの改善には繋がりません。
ランディングページの作り方については、こちらの記事で詳しく解説しているのでチェックしてみてください⬇︎
広告のABテストのやり方
広告のABテスト対象
- 媒体
- 配信相手(オーディエンス)
- 配信面(プレイスメント)
- 広告クリエイティブ(画像/テキスト)
媒体自体をテストして比較するのが、広告のテストでは大きなテストになります。
でも、web広告の場合は、あまり意味のないテストになってきています。
なぜなら、web広告のメインは「アドネットワーク」だからです。
アドネットワーク…web上のほとんどの広告枠に広告を出せる広告配信の仕組み。
どの媒体も似たような配信先に広告を出せます。(ほとんどGoogleがネットワークしています)
なので、媒体を選ぶこと自体に、そこまで集客インパクトの違いが出ないので、媒体のABテストはあまりされません。
web広告は、GoogleとFacebook(Instagram)をベースに、Yahoo!を追加したり、LINEを追加したりという形で、予算規模に応じて特徴的な媒体を増やしていくというのが、基本戦略になります。
web広告で重要なテストは、「配信相手(オーディエンス)」と「広告クリエイティブ」です。
なぜなら、広告を誰に出すのかで反応が変わり、何を見せるかで反応が変わるからです。
配信相手(オーディエンス)のABテスト
媒体が持っているユーザーデータを利用して、誰に出すのか、誰に出さないのかのパターンをテストしていきます。
例えば
A/B:女性のみ/女性かつ40代以上
A/B:女性のみ/美容に関心のある人
オーディエンスには大きく4つのタイプがあります。
オーディエンスのタイプ
- ターゲットを絞らないかなり広いオーディエンス
- ターゲットの性別・年代などのプロフィールで絞った広いオーディエンス
- ターゲットの興味関心で絞った狭いオーディエンス
- 自社サイト内での行動履歴に基づくかなり狭いオーディエンス
それぞれのタイプで、設定を変えていく事で、テストパターンを作れます。
例えば
- 男性のみ、30代のみ、50代以上、会社員、独身、、
- アパレル関心層、健康関連関心層、美容関心層、、
- LP訪問者、商品ページ閲覧者、申込フォーム訪問者、、
など。
広告クリエイティブのABテスト
広告画像やテキストの組み合わせパターンをテストしていきます。
例えば
A/B:商品画像/男性の写真
A/B:商品の特徴コピー/キャンペーン価格のコピー
など。
使う媒体によって、広告クリエイティブの画像を優先的にテストするか、テキストを優先的にテストするかは変わります。
レスポンシブ広告やインフィード広告と呼ばれる、画像とテキストの組み合わせの広告クリエイティブの場合、画像で目を止めてもらって、テキストを読んで興味がわけば、広告をクリックしてもらえます。
なので、画像のABテストを優先的に行う場合が多いです。まずは見てもらえなければ、その先が無いからです。
反応の高い画像が見つかったら、次にテキストのテストを行い、より高い反応のクリエイティブを探します。
媒体が配信される場所を見て、画像よりもテキストの方に先に目がいくような媒体であれば、テキストのテストを優先します。
実際の配信のされ方をチェックして、画像とテキストのどちらを優先的にテストするのかを考えてください。
補足:ABテストの有意差について
「ABテストはやってるけど、どれくらいテストすれば良いのかわからない…」と感じている人は多いです。
テストデータは多ければ多いほど良いのですが、予算が限られていたり、どこでテストを区切れば良いかがわからないので、正しくテストできているのかどうかがわからない状況が起こっています。
そこで、「有意差」という考え方が使われています。
これは、AパターンとBパターンの結果の差が、誤差なのか意味のある差なのかを知るために使われます。
例えば
①:AパターンのLPを見た人が1000人、BパターンのLPを見た人が1000人いた場合
②:AパターンのLPを見た人が5人、BパターンのLPを見た人が10人いた場合
①と②とでは、その結果に信用度の違いがであります。
②の場合は、「たまたま」が発生しやすいということです。
「たまたま」でた結果で良し悪しを判断していたら、正しくABテストができません。
なので、「統計的に意味があると示せるかどうか」を調べて、意味のある差があればABテストの結果として扱うという考え方です。
でも、「有意差」とか「統計的に」とか言われてもややこしいですよね。
なので、各パターンで100サンプルずつ集めることから始めてください。
肌感ですが、AパターンとBパターンそれぞれ100ずつくらいのサンプルがあれば、それをもとに結果を評価して問題ありません。
それ以上やっても、結果が逆転することはあまりないからです。
AパターンとBパターンで差がある場合、小さなサンプル数の時点で明らかに差が出てきます。
小さなサンプル数の時点で大した差がない時、サンプル数が増えれば差が出てくることもありますが、多くの場合は初動で明らかな差が出てくるので、100を目安にABテストしてみてください。
効果のあるABテストのやり方|集客力をアップさせるための基本原則 まとめ
ABテストの目的は、CVRを高めることです。
テスト対象には大きく3つあります。
ABテスト対象
- キャンペーン
- ランディングページ
- 広告
テストはCVRの改善インパクトが大きな箇所からやるのがポイントです。
キャンペーン>ランディングページ>広告の順で取り組んでください。
キャンペーンのABテストは、割引・特典・保証のオファーのパターンをテストします。
ランディングページのABテストは、ファーストビューのコンテンツパターンをテストします。
広告のABテストは、配信対象(オーディエンス)と広告クリエイティブのパターンをテストします。
ABテストのポイントは、同時に複数のテストをしないことです。
テストする要素以外は変更せず、テストしたパターンの違いのみが結果に影響するようにします。
テスト言いつつも、やり続けること、磨き続けることになるので、実行=テストだと思って、どんどんABテストをしていってください!